映画を見た。「6才のボクが、大人になるまで。」「インターステラ―」「フューリー」「デビクロくんの恋と魔法」

11月に映画をいくつか見たのだけど、
どれもおもしろかった。とくに印象に残ったのは、
「6才のボクが、大人になるまで。」だった。

タイトルの通り6才の少年が大人になるまでを描いた
家族のドラマなのだけど、すごいのは、
大人になるまでの12年が本物ということ。
ふつうは、映画の時間の流れに合わせて、
6才ならこの子、10才ならこの子、15才なら――、
みたいに作中の歳に合わせて俳優が替わったりするけど、
この映画は、本当にひとりの少年を12年かけて撮影している。
少年だけでなく、主要メンバーである母と父と姉もずっと同じ。


長い時間をかけて対象を追うドキュメンタリーはあるけど、
これはドラマだというのがすごい。こんな長い演技って。
主人公の少年の顔は、面影を残しながらどんどん変わっていく。
髪が伸びたり短くなったり、ぽっちゃりしたり痩せたり、
いきなり声変わりしてたり。外見的なことだけでなく、
演技の仕方や、内面というか歳とともに俳優自身の心に
蓄積されてきたであろうものが演技を通して、
じわじわと感じられるようになってくる。なので、
ドラマなのかドキュメンタリーなのかわからなくなる。
演技をしているけど、本人の生き方が出ているように思う。
だからこの人たちのことが大好きになる。


実際には1年に数日間みんなで集まって撮影をするというのを
12年間繰り返したらしいけど、それにしてもすごい。
その時々の社会的なことや、俳優の状況も織り交ぜて、
シナリオを変えたり、編集をしたりしたそうだ。
ドラマが持つ物語の力と、ドキュメンタリーが持つリアルな力の、
よいところを融合させたような素晴らしい作品だった。



「インターステラ―」もおもしろかった。
3時間もあったけど展開に引きつけられて長いと感じなかった。

未来の宇宙の話で、とにかくむずかしい内容なのだけど、
それもそのはずで、登場人物が話していることや、
やろうとしていることや、描かれている宇宙の姿は、
どれも理論物理学の研究内容をもとにしているらしい。
舞台上の黒板に書かれている数式も本物の学者が書いたそうだ。


映画は超おもしろかったのだけど、
見おわって、いや見ながらずっと興奮して、ぼくは思った。
「おれも同じこと考えてた!!」
あまり書くとネタバレになってしまうので控えますが、
恐れ多いですが、ぼくもクリストファー・ノーラン監督と、
同じ宇宙観を持ってたってことですよ。
またまた~と思われるかもしれませんが、
ぼくの書いた2009年1月の日記を読めばわかると思います。

でしょう~??



それから、何の気なしに見て、
あわわわとなったのは「フューリー」だった。
戦争の映画ということはわかっていたのだけど、最初の数分で、
「ちょ、ちょっとぼく、覚悟とかできてないんですけど」
と不安になったほどだった。
(勢いでジェットコースターに乗ったら、
最初のゆっくり上がっていくところで、
想像をはるかに超えて高く行くので焦るような感じ)

これは心臓の弱いひとは注意した方がいい。
または、見る前に覚悟してから行った方がいい。
だけど見てよかったと思った。


カート・ボネガットの「スローターハウス5」や
ロバート・ウェストールの「ブラッカムの爆撃機」を
読んでからそんなに時間がたってなかったこともあって、
どれも第二次世界大戦の終盤で米国や英国がベルリンを攻めて、
戦闘が激しくなっているあたりを描いていて、
「フューリー」の世界がどういう状況かすぐに入ってきた。
そして、やっぱり悲惨だなと思った。ほんとおそろしくて、
いろんなことが押し寄せてきて頭が混乱した。
映画とは思えないリアルさと迫力で、
生きるか死ぬかの極限状態がずっと続くので、
見てるぼくも緊張しっぱなしだった。


映画を見おわったあとも緊張が解けなくて、
レイトショーだったので深夜0時すぎだったのだけど、
自転車に乗って駐輪場から出ようとしたら、
クルマのヘッドライトに照らされただけなのに、
「狙撃される!!」
て反射的に思ったもの。ほんとに。
そのあともビクビクがなかなか治まらなかった。
しかし、ぼくの祖父たちは、
あの戦争に行ってたというのが信じられない。
戦争を体験した人たちにとって、生活とか仕事とか、
死生観ってどういうものになるなのだろう。
強制的に戦争という極限状態におかれると、
その後の人生はどうなっちゃうのだろう。
祖父はもういないので、話を聞けない。



「フューリー」がショックすぎたので、
心を落ち着かせようと、中村航さんの小説を読んだ。

小説を原作とした映画も上映中で、
映画も小説も、どちらもおもしろかった。

映画は夜に見に行ったのだけど、
親子で来ている子や女子のグループやカップルがいて、
場内がほのぼのした空気になっていた。
内容もキュートで心があたたまるものなので、
ほかほかした気持ちになって帰ったのだった。
映画に、原作者の中村航さんがちらっと出演しているのを
見たときが、ぼくはいちばん盛り上がりました。