県庁の鬼

父のわきの下に、謎の湿疹ができたのを見た母が言いました。


「ああいうのに刺されると、そういう風に赤くなる」


父が「『ああいうの』って何?」と聞いたら、
母は「知らない。」と言いました。


普通、「ああいうの」と言う場合、
発言者の頭の中に特定のイメージがあって、
それを「ああいうの」と言うわけだから、
それを「知らない」と言い切るのはおかしいのではないか。


と、多くの人はそう考えるだろうけれども、
「刺して赤い湿疹を、そういう風に作るもの」は、
「刺して赤い湿疹を、そういう風に作るもの」以外の何物でもなく、
それが明確な単語で説明可能なものでなくてはならない
という決まりはない。だから、
知らないものは知らないとしか言いようがない。


母は「県庁の星」という映画のことを、

県庁の


と間違えました。
しかし驚いたことに、「県庁の鬼」で検索すると、
検索結果は、軒並みに「県庁の星」を示したから、
「星」でも「鬼」でも、あまり大差ないということだと思いました。


だから、「巨人の鬼」、「鬼に願いを」、「鬼の王子様」
というのも大丈夫だろうし、逆に「星に金棒」とかなると、
「星」と「金」できらびやかな感じがして、


実に美しい。