阿藤智恵さんの『中二階な人々』を読んだ。

劇作家の阿藤智恵さんが送って下さった、
阿藤さんの戯曲『中二階な人々』を読みました。
素晴らしく「中二階」な感じが漂っていて、
うわあとなりました。


中二階で共同生活をする30才に近い
男女6人の物語で、登場人物の会話が、
テンポよく、リアルに展開されるので、
あっという間に、自分が作中に入り込んでしまいました。


舞台となる中二階は、共同生活者たちのたまり場で、
ソファがあったり、温々していて、酒盛りが行われたり、
そのまま寝てしまったりする、出入りのある、ほのぼのした空間。
男女の仲は、恋愛でもなく、家族でもなく、兄妹でもない、
ノリで一緒に住むようになった、ふわふわした関係。


まさに「中二階」。


そして、その「空間」と「仲良し」が、
「すごく、いいなあ。うらやましいなあ」
と僕は感じたのですが、いや待てよ、果たして
「このままでいいのかなあ」という気持ちにもなりました。
不満はないけど、満足しているか?というとそうでもない。
慣れ親しみすぎて、外から見たらおかしなことが、
あたりまえになっている、それでもいいとも思っている。
30才の男女。


それでハッとしました。



「今の僕のことだ」と。




今の僕(30才目前)の、このなんともいえない、
漠然とした不安、先の見えないというか、
このままでいいのか、だからといって何ができるわけでもない。
そう!「へもい」感じが、
「中二階」という言葉に凝縮されていて、
切ないような、温かいような、こわいような、
1階という過去と、2階という未来、夢と現実の間。
その「不安定」な感じが、非常に生々しいのです。


30才って、みんな、そういう年なのかなあ。
40才、50才の人々は、この中二階で少しの間を過ごして、
みんなどこへ行ったのだろう。それとも、
とどまり続けているのだろうか。


阿藤智恵さんの作品は『しあわせな男』の舞台を
拝見しただけだったので、他にどのような作品を
書かれる方なのだろうと思っていましたが、
『中二階な人々』を読んで、
なるほどと、とても、なんか、胸が温かくなりました。


とても素敵な作品でした。本当にありがとうございます。