仰向けに寝ると、上の奥歯が少し痛いような、
痛くないような気がする時期がしばらくありました。
なぜか、仰向けに寝たときだけ、少しだけ痛いのです。
なので、歯医者へ行って、状況を説明したところ、
レントゲンを撮ることになりました。
レントゲンの結果、鼻の奥と歯の根っこの辺りの空洞、
上顎洞というところに、丸いものがあることがわかり、
それが歯の根に当たるのが原因ではないかと、お医者さんは言って、
ここではよく分からないので、もっと精密な検査をして下さいと、
大きな病院への紹介状を書いてくれました。
大きな病院の耳鼻咽喉科で、CTスキャンをしたところ、
上顎洞に、はっきり「丸い玉」が入っているのが見えました。
まあ、放っておいてもよいだろうということになり、
8年以上経ちました。
「この丸い玉は何なのだろうか」
春になると例の場所が、少しだけ痛くなるので、
玉のことを考えます。
小学5年生の頃、
オカダ君の家で遊んで、
だいぶ暗くなってから自転車で帰るとき、
僕はUFOを見たのです。見たといっても、遠くにではなく、
4メートルくらい上の至近距離で、ものすごくしっかり見たのです。
それは、赤、青、黄、白、紫とかの無数のランプが輝いていて、
ランプの付いている本体は、たしか銀色だったと思います。
それが、民家の屋根と屋根の間に跨るほど巨大で、
何の音もなく、煌々と浮かんでいたのです。
あっと息を飲んで、次の瞬間すごい恐怖に襲われました。
連れて行かれる!
自転車を全力でこいで逃げました。
逃げている間、ずっと背中を捕まえられるのではないかと、
背筋を反り返らせるように走りました。
家に転がり込むようにして帰って、震えが止まりませんでしたが、
家族にも友達にも、UFOを見たことは言いませんでした。
なぜなら、言ったらUFOが僕を消しに来ると思ったからです。
しかし、半年くらい言わないようにしているうちに、
すっかりUFOのことは忘れていました。
きっと
UFOを見たとき、上顎洞に玉を入れられたのです。
逃げ切れたと思っていましたが、
玉を埋められた記憶は、消されたのだと思います。
振り返ると、玉が入った時期を境に、
やけに鼻が利くようになったように思います。
そして「鼻」が僕の中で、特別な位置を占めるようになりました。
しーなねこの鼻が、大きくて赤いのも
そのためなのだと、今になって思います。
高校生のとき、宇宙と一体化して、
嗅覚にさらに磨きがかかったようです。
物の匂いというより、抽象的な匂いを嗅ぐようになりました。
エイプリルフールなので、
ウソを書こうと思ったのですが、
よいウソが思いつかなかったので、
ウソのような本当のことを書いてしまいました。