小説集『突き抜け』のご購入はこちらから。



失われた10年を取り戻す。

僕の中で「失われた10年」という期間があって、
それは中学・高校・大学の10年間のことなのですが、
僕はこの期間、多くのものを失ってきたのです。


何を失ってきたかと言うと、つまりは、




「青春時代の、恋人との甘酸っぱい思い出」




みたいなものです。
多くの精神的に健全な学生たちは、
異性とラブして、手をつないで、イチャイチャして、
青春と呼ばれるものの中で、わいわい楽しく、
日々の生活を謳歌して、満たされたオトナになり、
その輝かしい日々を糧に、今を真っ当に生きているわけです。


ところが僕の学生時代、特に高校時代ときたら、
友人はひとりもおらず、毎日下を向いて歩き、怒り、
暗い暗いノイローゼのような日々を苦しみながら、
吐き気と共に送ってきたわけですが、
その経験、トラウマ(精神的外傷)のようなものが、
今になっても、尾を引いていると感じることが多々あるのです。


何かにつけて、学生時代の屈折した気持ちが蘇って、
青春を楽しんだ人や、モテてイチャイチャしている人を見ると、
世間への復讐心が燃え上がって、




「なめんなよ!」




と思ってしまう。これは我ながら不健全だと思ったのです。
なので、僕の「失われた10年」を取り戻すこと。
そうすれば少しは、穏やかで真っ当な生活が送れるのではないか。
そんなわけで、「失われた10年」を取り戻してきました。



今回協力してくれたのは、

せりさんと、にょこさん。
以前に飲み会をしたとき、せりさんが、




「制服デートがしたい」




と言っていたので、それに乗っからさせて頂きました。
さあ、学生時代に戻って、あれやこれや、
やり残してきたことをやって取り戻すのです。


にょこさんには、主に撮影を担当して頂きました。
舞台は、千葉県の松戸。駅で待ち合わせ。
すでに、せりさんは制服を着ていました。



僕は制服を持っていなかったので、黒ズボンに白シャツという、
いつものスタイルなのですが、シャツの裾をズボンにしまうことで、
なんとか学生らしさを演出していきました。



学生に見えるかどうかは、とりあえず置いといてください。
援助交際とかではありません。
これは、僕の心の治療の一環なのです。


そうでした、申し遅れましたが、


私、30才です。
(せりさんは、僕より少し下です)



まずは、

「ウインドウショッピング」です。
学生時代の僕は、学校と家の往復しかしていませんでした。
ですから、女子と外で遊ぶなんてことはなかったのです。
ということで、街に出てショッピングすることで、
失われた時を、取り戻してきます。




こう見ると、学生に見えないこともない。



30分ほど、雑貨やアクセサリーのお店を見て回っていると、
恥ずかしさは消えて、何も感じなくなってきました。



「これなんかいいんじゃない?」
「ねこかわいいですね」
こういう、たわいない会話をしたかったのだ。
学生時代に、こういう「たわいない会話」を女子と重ねておけば、
僕は、もっと話しやすいオトナになっていたのではないか。
そんな考察と共に、失われた10年が少しずつ、
取り戻されていく感じがしました。


(取り戻し度:5%)



続いて、

カラオケに行きました。
やはり、学生の遊びといったら、昼から「カラオケ」です。
僕が高校・大学の時も、同級生は放課後に、
カラオケばっか行ってました。
当時は、カラオケの話をしている男女を横目に、




「カラオケの何がおもしろいんだよ、バカどもが」




と心で毒づいていましたが、





おもしろいんですよね、これが。




就職してからですよ、カラオケを知ったのは。
もっと早く知っておけば、ストレスを溜め込むこともなかったのでは、
と思いました。熱唱して、青春的なものを結構取り戻しました。


(取り戻し度:15%)



にょこさんも歌う。



そういえば、

そうでした。外見が学生に見えないのを補うために、
僕は「学生帽」を持参していたのでした。
学生帽を被れば、どう見たって学生です。
なぜなら、学生帽は学生が被るものだからです。


しかし、



Yahoo!オークションで慌てて買ったのですが、
サイズを間違っていたのでした。




小っちぇーのな。


どうやら小学生用のものらしかったです。
学生に見えるかもしれませんが、
偏差値は極めて低めの学生だと思いました。



街遊びの最後は、

プリクラです。僕が学生時代、もっとも憎んで、
八つ裂きにしてやりたかったもの。




それが「プリクラ」です。




バカの一つ覚えみたいに、女子はルーズソックスをはいて、
茶髪にして、ピースの手を横にして、
指と指の間からウインクして、舌を出したりするじゃん
もー、イライラして、大変でした。あと、プリクラの上に、
「いっしょうなかよし☆」
とか手書きの文字とか、入れるじゃん
ああいうのも、ムカーッときてました。
「いっしょう」だと?片腹痛し、貴様らのような、
ステレオタイプの享楽主義者どもが、
何をもって「一生」などと抜かすのかと!


そんなわけで、プリクラが大嫌いだったのですが、
初めてやってみたところ、





プリクラ、たっのすぃーー!!




特に、左下の僕の全開の笑顔は何だ。
どうやら僕は、薄々感付いてはいましたが、
自分ができないことを、他人が楽しそうにやっているのを見て、
単に激しく嫉妬していただけなのかもしれません。


(取り戻し度:30%)



女子、または女子と同伴でないと入れない、禁断のプリクラブース。
本物の学生たちばかりで、ひるむ。




続いて、

せりさんのクルマで、江戸川沿いの土手に移動しました。
学生といえば、やはり、




土手だと思います。



とりあえず、にょこさんから自転車をお借りして、
近くの学校の前で記念撮影をしました。



ちなみに僕らには、何の関係もない学校です。
僕は高校時代、チャイムが鳴ると同時に下を向いたまま小走りで、
校門を一番乗りで抜けて帰るような生徒でした。
女の子と並んで帰るなんて。すごいな。


(取り戻し度:40%)



それで、

なんで自転車かといったら、もちろん




「二人乗り」をするためです。




今日は天気がよくて、とても気持ちのよい日でした。
自転車を押して、舗装された道まで上がります。


そしてついに、
念願の、女子との「自転車二人乗り」が実現しました。


「しっかりつかまってろよ!」
(実際は、「あ、安定するので、しっかりつかまっといてください。」)



最初のうちは、よろよろして、
せりさんはキャーキャー言っていましたが、
すぐに安定して、風を感じる余裕も出てきました。
そして、せりさんの僕へのしがみ付きっぷりが、大変心地よく、




「俺に頼ってくれている!」
あえて「俺」と言う)



という感動が、ドーパミンみたいなものを
脳内で分泌させて、テンションが上がりました。




甘酸っぱい!非常に甘酸っぱい!と思いました。
ペダルを漕ぐと、10年前に凍りついて止まった過去時計に、
温かさが蘇ってきました。ぜんまいを巻くように漕ぐと、
失われた時が色づいて、取り戻されていきました。


(取り戻し度:75%)



走り回る若人

もう、恐いものはない。



「まってー、しーな先輩」


「ははははは、つかまえてごらん」


(取り戻し度:85%)


楽器演奏

ところで僕は、スタジオジブリの映画
耳をすませば」が大好きで、
失われた時を取り戻すかのように、学生の頃に、
50回は見ました。なので青春というと、
どうしても「耳をすませば」のイメージになるのです。


ということで、映画のヒロインの月島雫の恋人である、
天沢聖司のように、楽器演奏をすることにしました。
映画はバイオリンですが、オカリナでやりました。




「カントリーロード」と「コンドルは飛んでいく」
「きらきら星」「はとぽっぽ」を演奏して、うっとりさせましたが、
遠くから犬が吠えていました。


(取り戻し度:95%)



帰り道


「では、また。さようなら」
と言って、自転車を押して帰りました。


しーな先輩が見えなくなるまで、見送るせりさん。
そして、角を曲がって姿が見えなくなった後、
自転車のベルが、5回鳴り響く。その音は、
「あ・い・し・て・る」
の5文字に当る。という設定でしたが、
これは、ちょっとやりすぎだと思いました。


(取り戻し度:100%)



総括

制服プレイ中は、失われた10年を、
着実に取り戻しつつあるという、気持ちの高まりがありましたが、
実際に、




取り戻せたのかどうかは、分かりません。




しかし、楽しかったことは間違いなく、
これはよかったと思いました。
今日の出来事を、脳内のタイムラインを細工して、
学生時代のところに、上書きすればよいと思います。


そして、せりさんと、にょこさんとも話したのですが、
学生時代に、イチャイチャしたり、ラブしたりするのは、




あまりにも普通で、おもしろくない。




ということ。一方、30才になってから、
制服を着て取り戻そうとする人間は、希少で、
普通でない味わいが出るから、そっちの方がいい。
という、自分に都合のよい結論に至りました。


それに僕の原動力みたいなものは、案外、
過去を失ったことに始まっているのではないか思いました。
逆説的に考えれば、僕は、




「失うことを得た」




わけで、失ってこなかった人たちは、




「失うことを、失った」




わけです。そして、僕が、どなたかと会って、
おもしろい人だなあと思うのは、大抵の場合、
「失うことを得た」人たちの方で、
何を失ったかは、人それぞれですが、その人たちとは、
心の底にある「失ったこと」で繋がっていると思うのでした。


とても楽しかったです。
せりさん、にょこさん、本当にありがとうございました。







帽子は、せりさんにあげました。ぴったりでした。



まとめ動画

この日のことを、動画でまとめました。