暗闇ホーミー、演劇「トータルエクリプス」、トークライブ

金曜の夜、渋谷アップリンクファクトリー
開催されているワークショプ「クラヤミノtones
に参加してきました。


これを教えてくれたのは、
毎度おなじみ小宮山さんで、一緒に行ったのでした。
内容は、完全な真っ暗闇の中で、30人くらいが、
各自でホーミーを出して歩き回るということで、
この話を聞いたとき、参加して大丈夫だろうかと思いました。


19時に会場で小宮山さんと合流し中に入りました。



中央に椅子が円状に並べてあり、
それを囲うように部屋の壁に沿っても椅子が並んでいました。
参加者がぞくぞくと入ってきて、
皆さん落ち着いた感じの人たちでした。
小宮山さんのホーミー仲間のNさんもいらしゃって、
始まるまでお話をしたりしました。


どうやら、ホーミーをする人たちは、
ホーミーコミュニティみたいなのがあり、
その中で顔見知りになっているみたいで、
会場のあちこちで「〇〇さん!おひさしぶり!」といった
声が交わされていて、驚きました。
ホーミー以外にも、こういうコミュニティは、
様々な種類で無数に存在しているのだろうなと思って、
なるほど、こういう時代なのだと思いました。
きっと、モンゴルの危機みたいなことになったら、
この人たちは、一斉に立ち上がるのではないでしょうか。
よく分かりませんが。


で、ワークショップが始まりました。
まず、ホーミーのプロの方二人がインストラクターとなって、
声の出し方や、呼吸の仕方に付いてレクチャーがされました。
指示に従って、全員で「オオオーーー」とか、
「エエエーーー」「イイイーーー」と出して、
その時点でうまい人は、あの独特の倍音(?)がしていました。
五〇人が一斉に声を出すと、結構な迫力でした。


そして、一通り練習が終わると、
声を出したまま、部屋が段々と暗くなっていき、
最後には、自分の手も見えないくらい真っ暗になりました。
もう声しか聴こえません。僕は明るかったときは、
わりと控えめでしたが、暗闇になってしばらくすると、
結構、大きな声で、


「オオオオオオエエエエエイイイイイ」


とか言ったりしました。
しばらくすると、立ち上がってくださいという指示があって、
全員が時計回りに、そろそろと歩き始めるのです。
もちろんその時も、声は出しっぱなしです。
暗闇なので、時計回りなのか、自分がどの方向に
進んでいるかも分からなくなり、それは皆同じで、
僕の前をすごいうまいホーミーの声が通り過ぎて行ったり、
あちこちから響いて、それは不思議な感覚でした。


暗闇だと、空間がとても広く感じました。
その広がりが、壁がないような感じにさせて、
それでも人がいっぱい歩きまわっているので、
頻繁に体と体が触れ合いました。
暗闇で外見や性別等の属性がなくなった、
ただの肉体となった五〇体のヒトが、肺から空気を送って、
喉や唇を振動させて音を出しているという状況で、
「ああ、人間が生きている」という実感がしました。
この中では、声だけが自分をアピールする手段なのでした。


ワークショップは二時間でしたが、あっという間でした。
帰りに、小宮山さんとお好み焼きを食べて帰りました。
おもしろいイベントを教えてくれてありがとうございました。



土曜。

前に、現代美術作家の束芋さんの展覧会に行ったと書きましたが、
その展覧会の一環として、束芋さんがとても影響を受けたという、
演劇の上演があって、それを観に行ってきたのです。




最初は、康本雅子さんのダンスを見たいと思って、
チケットを買ったら、セットで演劇もあったというくらい、
ほとんど期待をしないで観に行ったのでした。


そうしたら、びっくりしました。すごくよかったからです。
トータル・エクリプス」というタイトルで、
「WANDERING PARTY」という京都の劇団で、
作・演出はあごうさとしさんでした。


豊田商事事件を題材にした内容で、
事件までの様々な出来事を、様々な人々が、
次々と役割や場面を変え続けて、
さらに場面と場面が関連したり、
時間の前後が入れ替わったりしながら、
すごいスピードで展開していきました。


台詞はほとんどが、関西弁のハキハキした怒涛の棒読みで、
その台詞はものすごく長くて長くて、
原稿用紙一〇枚分くらいあるような台詞を、
一気に、間違えずに、大きな声で発声するのです。
それが次々と繋がって、うわあ、すごいと思いました。
それから舞台がとても美しくて、感動しました。
最初に男が鉄の鎖で繋がれて、天井から吊るされるのですが、
この鎖の光り具合とか、記者が焚くフラッシュの輝きとか、
ああ、どれもこれも、印象に残って、素晴らしくきれいでした。
束芋さんの絵やアニメーションのワンシーンを
見ているような感じになるところもあり、
なるほど、この演劇と束芋さんの作品が、
ジャンルは違っても、近いものなのだということが分かりました。


一時間の演劇でしたが、すごい早口と、
何枚も重なって展開するシーンとかのため、
ものすごく圧縮されたデータを心に残された感じで、
しばらく、解凍のために頭がぼんやりしてしまいました。


演劇の後に、束芋さんとあごうさとしさんが登場して、
トークをしましたが、これもなるほどなるほどと思いました。
かなり抽象的な作品なので、受け手側の感性に
ある程度委ねているというお話が興味深かったです。




その後、

吉祥寺に行きました。
吉祥寺の百年という本屋さんで、
百年「と」ストリートの思想」という
トークイベントがあるので、それを聞きに行ったのです。




一八時半に会場に着いたら、司会をする児玉さんが
「しーなくん!何してんの!」
と驚いていました。
参りますとお伝えしていなかったのでした。
それほど広くないスペースに五〇人くらいが
ぎっしり座って、満員になりました。


『ストリートの思想』の著者の東京芸大毛利嘉孝先生と、
ギタリストで、音楽イベントや他にも様々なイベントをしている、
飯田仁一郎さんと、児玉さんで、
ストリートの思想について語り合うのを聞きましたが、
とてもおもしろかったです。なんども笑ったり、
なるほど、なるほどと思いました。
本に書いてあったことと、今のことと、今後のこと、
見通しがよくなりました。


二一時過ぎにイベントが終了し、
毛利先生に「サインしてください」と、
『ストリートの思想』を持って行ったら、
「サインとか書き慣れてないんですが」
とおっしゃりながらも、サインして下さいました。
僕はこの本を読んで、ブワァーッと
沸き上がってくるものを感じたので、このサイン本を飾って、
ブワァーッとやっていきたいと思いました。


この後、出演者の方と、参加者の三分の一くらいで、
居酒屋に移動して、ビールを飲みました。皆さんに、
へもいっ子クラブシールもお渡しできてよかったです。
前に演劇やダンスを観るのをご一緒した土佐さんの
お知り合いの方々もいて、びっくりしました。


今、ストリートではあちこちで、
おもしろいことをやっている人がいて活躍中で、
ああ、僕もやらなくては!!と、
帰りの電車で、両手をぎゅっと握り締めたのでした。



もっと頑張ってやっていこうと思いました。