草津温泉に行ってきたのです。

十一月三日から、一泊二日で草津温泉に行きました。
九時半に東京の丸ビル前から草津温泉直通のバスがあって、
これに三時間半乗ると着きます。片道二千円、安い。


ホテルに荷物をおいて、湯畑まで下りました。
東京も寒かったのですが、草津はもっと寒かったです。
ホテルの人に聞いたら今の気温が二℃で、
明日は氷点下になるとのことでした。

天ぷらと、うどん。


この後、西の河原露天風呂へ行きました。
典型的な秋晴れで空が青く高く、山の紅葉が重なって、
なんだこれは絵葉書かというくらい美しかったです。
入って三十分もすると日が暮れて暗くなり、
橙色の電灯が点きました。冷たい風が
お湯の表面をなでながら走っていくと、
照明の中で湯気のカーテンがくるくる立ち上りながら、
さーっと移動して、幻想的でよかった。本当によかった。


ここは中村航さんの『夏休み』という
小説の中に出てくるんですよと話したりしながら、
ホテルに帰りました。途中、温泉饅頭屋のおじさんに
饅頭を渡されて、そのまま、お茶も渡されて、
茶碗を返すために店の中に入って、
完全にされるがままでした。

夜に

ホテルの露天風呂に入ってから、日本酒を飲んで、
部屋から外を見たら、すごい数の星が見えました。
おおーっと言って、ちょっと外出てみませんかと、
浴衣の上に綿入れ、その上にコートを羽織って、
ホテルのエントランスに向かいました。〇時頃でした。
エレベーターを下りて静まり帰ったホテルのロビーを歩いてたら、
ボーイさんがいて、「外は氷点下ですよー」と笑って
忠告してくれましたが、「ですよねー」と外に出ました。


すごい星の数でした。オリオン座とか、
ものすごくはっきりわかりました。
カメラで撮ろうとしても暗くて撮れないかと思ったのですが、
シャッタースピードを遅くして撮ればいけるかもと
カメラを地面に仰向けに置いてシャッター押したら、

撮れました!すごい!すごい!とテンションが急騰しました。
肉眼でもこれくらい星がたくさんあったのです。


温泉の源泉は、僕の足の下の、
地球の中の中から噴き上がって出てきて、
そのお湯に浸かった僕の頭の上の上には、
このようにぎょっとするほどの星がある。
地球の中心から、宇宙まで、
一本でつながったような気持ちになりました。

翌朝、

チェックアウトして、バスで白根山に行きました。

湖の表面は氷が張っていました。
ゲンコツで叩くと割れて、両手で持ち上げると、
七ミリほどの厚さの氷の板がとれました。


氷の板を立てておいたところ。氷の中には
無数の気泡が詰まっていて、太陽の光できらきらして、
顔を近づけてよくよく見ると、星が落ちてくる最中に、
凍りづけされたようにも見えました。

白根山の上の方まで登る途中に、赤い木の実や樹氷がありました。
どれもこれも青い空によく映えていました。




バスで再び温泉まで戻って来て、新宿行きのバスが来るまで
一時間半ほどあったので、湯畑近くの無料の公衆浴場
白旗の湯に入りました。この温泉がもう強烈に濃厚でよかった。
木造で湯船が二つありました。ひとつは熱くて、
もう一方は、激しく熱いお湯でした。
激しく熱い方に足を入れた瞬間、あっつとなったのですが、
「いや、足が冷えてるからだな」と思って一気に肩まで入ったら、
ぎゃーってくらい、やっぱり熱くて、
慌てて出て床に足を放り出したら、
常連らしいおじいさんに笑われました。四十七℃あって、
おれは昔はもっと長く浸かっていられたと言ってました。

激しく熱くない方のお湯には、なんとか入っていられて、
ここで首を上げると、やぐらの中みたいに高い天井が見えました。
木造の正方形の枠の中を、もうもうと湯気が上がっていて、
歴史とか風流とかよくわかりませんが、
すごいなあと、とにかく感心しました。


温泉で何度もお湯を頭からかぶったりして、
適当に髪を拭いてきで出てきたら、
「風邪ひくよ」と言われました。
いや、この草津のパワーがあるんだから、
風邪なんか絶対にひきませんよと言いました。

で、お土産に温泉饅頭を買って、バスに乗って、
うとうとして目覚めたら寒気がして、せきが出て、
家に帰って寝て起きたら、のどが痛くて、


風邪をひいていました。


いや、しかし、これは風邪ではないのです。
きっと草津のパワーが、僕の中の邪気を追い出している
デトックス的なあれだと思うので、風邪だとは信じていません。
そう、風邪ではありません。デトックスです。
いい、あれです。


草津最高でした。