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アートアンドブレインの体験会に行ってみた。

『脳の右側で描け』という、右脳を使った
絵の描き方についての本があるのですが、
それを実際にやる五日間のワークショップが、
都内で年に数回行われているらしいのです。


で、いきなり五日間はあれだし、費用も結構かかるし、
何かあやしいものだったらどうしようという、
心配性な僕のような者のために、
一日体験会があると聞いたので、行ってきたのでした。

新宿の青少年センターの一室で、
十人くらいの受講者がいました。
講師は、前述の本の著者、ベティ・エドワード博士から
唯一推薦されているという女性の先生でした。


最初に、ワークショップ前と後の絵を見ました。
驚いたのは、前後での絵の上達ぶりです。
受講前は、こりゃないだろうという、ど下手な絵が、
五日後には、陰影のついたリアルな絵になっているのです。
あまりの変わり様に、笑ってしまいました。


そして、このワークショップの主眼は、
絵を描くことはもちろんなのですが、
むしろ、いかに自分に適した脳の使い方を会得するか、
ということのようでした。
なので、美術関係者以外にも、様々な受講者が、
自己啓発の目的で受けるそうです。



体験会では、

一枚の逆さ絵を模写する課題をやりました。
先生が「では、そこまで」と言ったら終了。
途中でも、それを正面のホワイトボードにすべて貼って、
受講者の皆で、感想などを述べ合いました。


おもしろかったのは、
絵の描き方に脳の癖が現れていたことです。
絵の端から描く人、自分の好きなところから描く人、
放射線状に描く人、鏡のように線対称で描く人など。
線の濃淡も、描いた場所も人それぞれ。


先生は、絵についていろいろ質問します。
「どこから描き始めましたか?」
「どうしてですか?」
「イライラしませんでしたか?」
それらに答えていて、発見したのですが、
描き始めるとき、
「時間も紙もたっぷりあります」
と先生は言っていたのですが、僕は、
「たっぷりって言ったって、十時間もあるわけではないよな」
と思って、二十分くらいで全体を描こうとしたのでした。
また、描いている途中に、バランスが崩れると、
失敗したなあと思ったり、それから少しやけになって、
わりと適当に、線を引いたりしていたのです。
結果的に、濃淡や精密さに、むらが出てしまいました。


で、このパターンなのですが、
小説を書くにしても、会社の業務にしても、何かするときに、
よく出るパターンじゃないか、と驚いたのでした。
つまり、早めに全体を雑でもいいから仕上げて、
後から精密にしていくけど、プロットがきちんとなってないので、
つじつまが合いにくくなり、ちょっと力ずくにやって、
全体のトーンにむらが生じる。


うわあ……と思いました。


で、先生によると、時間やつじつまは意識せずに、
楽しくやりなさい、とのことでした。
僕に限らず、すべての基本は、


「楽しくやる」


ということでした。
脳が楽しければ、集中して、長く楽しく、楽に、
高いパフォーマンスで描くことができる。
だけど、時間やつじつまの意識や、ねばならないという思考は、
左脳優位でイライラして、パフォーマンスが落ちるそうです。
なので、自分の脳の特徴をよく知って、いちばんよい脳の使い方をする。
五日間のワークショップではそこまで学べるそうです。



だから、

小説を書くにしても、期限を意識して、
そこまでに書こうとすると、わるい癖が出るので、
楽しく好きなように書く方が、意外と早く、
うまいのができるのでは、などと考えました。どうだろう。
会社の業務では、期限は必ずあるので、
いかにそれを意識しないように、
余裕を持って進めるかということでしょうか。


野球のイチローとか、将棋の羽生善治とか、
プロの中のプロは、脳の使い方が、
卓越してうまい人なのだろうなと思いました。


他にも、脳について興味深い話をたくさん聞きました。
ただ、課題でずっと逆さまの絵を凝視して写していたので、
めまいがして、ちょっと、気持ちがわるくなったのでした。