小説集『突き抜け』のご購入はこちらから。



もう三十日なのですね。夢のなかの会話。

昨日の朝、ぼんやりしていたら、
夢の一歩手前のような曖昧なところで、
会話が聞こえてきたのでした。まわりに人はいない。


「たとえばほら、ししおどしがカコンってなる瞬間、
あれを人間関係の破局だとするじゃない。
水が全部吐き出されたとき、それまでの小さな傷や
無理がこんなに溜まってたのかって、
みんなは初めて気づくけど、私はそうじゃないの。
竹に一滴でも水が落ちたときにわかるの、
一年後とか半年後には、ししおどしが鳴るって。
心や人間関係を自動制御に任せたくないじゃない」


というようなことが女性の声で聞こえた。
すると、誰かわかならい男性が夢のなかの女性に、


「じゃああれだね、君の庭は干乾びちゃうね。
すぐに水をとめてしまうのだから。
みずみずしく生きたいなら水を流さないと。
水に感情はないよ。水が溜まった容器のかたちが、
感情として認識されるんだよ」


と言ったのでした。僕はそれを立ち聞きして、
よくわからないけど、へええ、なるほどと思って、
しっかり目を覚まして、メモに書きとめたのでした。