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神保町でカレーを食べて、地図BARへ行って架空地図を見た。

梅雨の鬱陶しさとくらべたらいいもんだから、
あつくなっても「いいな、このあつさ」と思っていたけど、
こう連日だと、へたってきた。朝ぐったり目覚めます。


金曜日の夜、神保町へ行った。「地図BAR」という、
地図好きの人が集まるというイベントがあるからで、
しばらく前のタモリ倶楽部で「架空地図」という、
現実には存在しない場所の詳細地図を紹介する回があって、
その作者のひとり地理人さんという方がイベントに出る、
と聞いて行ってみることにしたのだった。


地図BARに行くまえに食事をする。
神保町といったらカレー、らしい。
検索して近いところにあってうまそうなところへ。
路地の小さなビルの二階に上がると、
狭い通路に八人くらいが丸椅子に腰掛けて列を作っていて、
エアコンも扇風機もないので蒸し風呂みたいになっていた。
さいごの丸椅子に座っている間にも、ぞくぞくと人がきて、
列を見て引き返したり、列に加わったりしているうちに、
店を出るお客さんも多くて、一五分くらいで中に入った。


チーズカレーとビールを注文した。
実は、というか、あらたまることもないけど、
しばらくまえから禁酒をしていて、禁酒をしながら、
ビールや日本酒を飲んでいるのでできてないのだけど、
飲む量は最盛期の五分の一くらいになっているので、
これは禁酒していると言っても差し支えないレベルで、
ウイスキーボンボンみたいなものだ。
と、言い訳みたいなことを自分に言い聞かせています。

どろっとしたカレーの中にチーズが溶けていて、
よくかき混ぜて舌の上にのせると、
鼻の奥の骨から頭蓋骨を回って尾骨まで、瞬時に、
味と匂いが伝わる激しいうまさでクラクラした。



満たされて地図BARへ。
小さな雑居ビルの階段をあがる。さっきのカレー屋もだけど、
表からは見逃してしまうくらい地味で目立つ看板もないけど、
入ってみると賑やかで濃いことが行われているという場所が、
このあたりにはけっこうあるのかもしれないと思った。


地図BARの会場は内装が剥がされていて、
そういう造りなのか、いまだけこうなのかわからないけど、
全面コンクリートがむき出しの空間だった。
エアコンも据付の照明もない代わりに、工事現場で目にする、
大型の扇風機や投光器が無造作に配置されていて、
窓は、そもそも枠やガラスがあったか忘れたけど、
とにかく全開だった。でも蒸し暑くて、扇子が貸し出されて、
みんな顔や腕に汗をにじませながら、パタパタして、
コンクリートの壁に投影されるタモリ倶楽部の録画を、
簡易椅子に座って見たり、壁に貼られた架空地図を、
食い入るように見つめて、すでに一五人くらいいた。


勝手がわからずに椅子に座っていたら、
この会を紹介してくれたあまやさんさんが遅れて現れて、
おしゃべりしていたら、地理人さんへの質問コーナーが始まった。
地理人さんの「中村(なごむる)市」について。
矢継ぎ早に放たれる質問と、それに対し、
妄想を爆発させて回答する地理人さんとの掛け合いに爆笑。
実在しない都市なのに細部までストーリーがあって、
まったくブレのない設定に、もしかして地理人さんは、
パラレルワールドの街へチャネリングして、
それを紙に写してるのではという印象を持った。


とくに印象的だったのは、
「矛盾がないとリアルじゃなくなる」というところ。
架空だからいくらでも自由に書けるのに、
あえて矛盾を包含させている。実際の街がそうだからとのこと。
たしかに、そうすることで作品が強くなっている気がする。
街にかぎらず、人間だって矛盾だらけだし、
相反するものが不器用にでもまとまっている方が、
自然だと思っていたので、そうか、と感動してしまった。
人によって、どこから描くかぜんぜん違うらしい。
鉄道から描く人、山とか川から描く人、中心部から描く人など。
描かれた架空地図を見ると、その人がわかるというのもすごい。
ぼくは架空地図と、小説とを対比させて、いろいろ考えていた。
おもしろい発見がたくさんあった。


十時に解散になって、帰ることにした。
暑すぎて、どうにも頭が、かるい熱中症みたいになって、
そんな中で実在しない街の話を熱くしていたものだから、
「明日になったら、今夜のこと夢だったと思うかもしれませんね」
と、お風呂上りみたいになったあまやんさんと駅まで歩いた。
電車に乗って、Twitterを見ていたら、

あのドア付近でiPhone見てるのしーなさんじゃ・・・?!

というつぶやきを見つけて、ええっ!?と、
きょろきょろしたら、車両の奥にさとこさんがいた。
さとこさんは、以前に首都高の下を歩くイベントで会った方で、
まさかこんなところで会うとはと、びっくりした。
しかも地図BARでは、さとこさんの友人のサキさんと、
同じくばったり会っていて、架空と現実の境界が、
熱気で溶けちゃったような気になった。


おもしろくて、不思議な夜だった。
あまやんさんありがとう。