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「風立ちぬ」を観た。お墓参りをして、いろいろ話した。

何をしているのかよくわからないまま、
毎日が慌ただしくすぎてしまって、
こういうのはまずいのだろうと思っている。
金曜の夜、かるく飲みたいとメールをして、
二十時に会社を出て立ち飲み屋へ。イッセイ氏と。

食べものもお酒もうまい、いい店を見つけた。
飛露喜と田酒。ママカリの酢漬けがあう。
ひとり二千円と安い。また行こうと話した。


ビールと日本酒をコップ二杯しか飲んでないのに、
けっこう酔った。居間でテレビつけてごろごろ。
家人は寝ている。興味のない野球のダイジェストを流して、
なかなかお風呂に入る気にならず、iPhoneをいじる。
目がしばしばしてきたので、えいっとお風呂。
出ても、すぐ眠るのがもったいないのと、
返却期限が迫っていたので、午前二時からDVD。
パソコンで再生して布団に寝っ転がって観た。

ヒミズ コレクターズ・エディション [DVD]

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『ヒミズ』すごくよかった。ところで、水辺に住む子どもが、
暴力父親と対立する話は、小説で二つ読んだことがあるけど、
どうしてみんな水辺に住んでるのだろう。
だけど山だと違うような気もする。
四時すぎに寝た。

土曜日

昼に起きて、プログラムを書く。
ゲームでも作ろう。夕方、自転車で外へ。
区役所で期日前投票をして、TSUTAYAにDVDを返却して、
ジムで運動をして、上大岡の映画館で『風立ちぬ』を観た。

風立ちぬ サウンドトラック

風立ちぬ サウンドトラック

夢みたいに、うつくしい映画だったなあ。
監督の頭がおかしくなっちゃったんじゃないかってくらい、
静かだけど強烈なエネルギーを感じた。
やりたいようにやってる、見たいものを作ってるみたいな、
七十歳すぎて新しくなっていく芸術。また見ようと思った。


帰り、マンション前の広場に自転車を停め、ベンチで缶ビール。
目のはれが引くのを満月を眺めて待つ。ぼんやりと余韻に浸る。
暑くも寒くもない、調和がとれたような状態になると、
体への刺激がゼロになって、夢と現実が曖昧になる気がする。
いつまでもそうしていたくなるような贅沢な時間。

日曜日

午前中からプログラムを書いて、正午すぎに家を出る。
すがわらさんのお墓参り。もう五年も経つのか。
麻布十番で待ち合わせ。
すがわらさんの同期のOさん、Aさん。イッセイ氏と。
お参りを終え、お寺の脇に腰を下ろしてお茶を飲んで話す。
場所を変えて、カフェでハートランドビール。
なんとなく東京タワーのふもとまで行ってハイボール。
立ちながら夕暮れまで、いろんなことをしみじみ話す。
いくら話しても、話すことが尽きない。
暗くなった道を、大門までゆっくり歩いて、
居酒屋に入って簡単な食事をする。

Oさんとは会社ですれ違うけどあまり話す機会がない。
一歳の女の子がいて、仕事も生活も大変そう。
Aさんは、何年か前に転職して会うのも久しぶりだった。
四人ともどこか共通するものがある、と思いながら、
普段しないような話が続いた。
十時になって店を出て、浜松町から電車に乗った。


駅からひとりで帰るとき、話したことを振り返った。
今日、ぼくはこんなことを言ったのだった。
親の心の問題が、子どもの傷になって連鎖する
「家族連鎖」という現象のことを考えると、
ぼくは子どもが好きだけど、ぼくの問題が、
子どもや配偶者に連鎖してしまうのがこわい。
それを受けてOさんが、自分もそう思ってたことがあって、
子どもは持たないと思っていたと前置きをして言った。
実際に子どもが生まれてから、自分が子どものことを、
この世でもっともかわいく思って強く愛している
ということに気づいたときに、
そうやって愛することができるのは、
自分が親から強く愛されていたからだ
ということにも気づいたと。

この話を聞いて、ぼくの中のしこりが消えた気がした。
ぼくは家族連鎖をネガティブなものだけが
連鎖するものだと勘違いしていた。そうではなく、
愛することやポジティブなことも同様に連鎖するのだ。
そして、ぼくが子どもを愛したいと思えるのは、
ぼくも親から強く愛されていたからなんだと思った。
いやなこともたくさんあったけど、それを上回る愛。
ストレスや不器用さから親がぼくにした理不尽なことは、
ぼくが物心ついた頃の親の歳を、すでにいまのぼくが上回って、
ぼくが完璧ではないのと同様、親だって完璧ではなかったんだ、
という当然のことに気づいて、仕方ないと思ったのだった。
なんだ、同じじゃないか、と。
わるいところは、ぼくの代で治していけばいい、
そう思ったのだった。


そうは思ったのだけど、
子どもどころか、結婚する相手もいない。
だれか!