たそがれ千鳥ヶ淵

前の日記で、僕がことあるごとに
「イチャイチャしたい」とお酒の席で言い続けていたら、

ついに先日、イチャイチャしてもいいですよ
という方が現れたのです。言い続けてみるものですね。
「では今度、イチャイチャしましょう」
と、その場で日にちと場所を決めました


ということを書きましたが、
今日、そのTさんとお会いしました。
東京メトロ九段下駅に、午前11時に待ち合わせて、
桜の名所「千鳥ヶ淵」へボートに乗りに行ったのです。
天気は晴れで、思っていたより暖かく、暑いくらいでした。



桜はだいぶ散っていました。

僕は元気に咲き乱れる桜よりも、
だいぶ散った桜の方が、侘・寂というのでしょうか、
そういうのを感じて好きなのです。
お堀に向かう途中、屋台のようなところでカレーを買って、
ボートに乗りました。ボート、初めてかもしれません。
最初、Tさんがボートを漕いで下さって、どんどん進みます。



5分ほどしたところで、僕にもやらせてくださいと交代し、
漕いでみたのですが、案の定、
ボートはその場でくるくる回転するだけでした。
Tさんの漕ぎ方は、とても上手かったのだと分かりました。
僕も段々とコツが分かってきて、首都高の下をくぐったり、
お堀の端から端までと、魚がバシャバシャ騒いでいる近くや、
桜の木が水面まで下がってきている所など、
行ける所は全部行きました。


1時間くらい経ったので、「戻った方がよいでしょうか」と聞いたら、
「お好きなだけ漕いでください」と言って下さったので、
思い残すことのないよう、オールの向きや角度に神経を集中させたり、
両腕のバランス、支点・力点・作用点、上半身の体重移動などを、
よく認識しながら、徹底的に漕ぎまくりました。


それからボートの上でカレーを食べました。
水面を眺めて、30分ほど、たそがれました。


イチャイチャはしませんでした。



達成感を感じながら

ボートから降りました。
近くに素敵な景色があると、そちらへ案内していただきました。
さっき我々が乗っていたボートのあるお堀や首都高が、
一望できるところに出ました。
柵のない石垣の上ぎりぎりの位置に、正面を向いて直立すると、
魂が抜けて、空中に浮いているような感じがしました。すごい。


石垣に並んで座って、30分ほど、たそがれました。


イチャイチャはしませんでした。



ボートの心地よい疲労から

とても眠くなってきてしまったので、
「横になれる場所はありますか」と聞くと、
「あります」と北の丸公園へ行きました。
池があって、桜があって、芝生があって、
色んなひとが、ビニールシートを敷いて話したり遊んでいました。
イチャイチャしているカップルもいました。


「ああ、あれを持って来ればよかったですね」
と僕が、ビニールシートの形を手でやりながら言うと、
「ぬかりなく」と、Tさんは、大きめのシートを
バッグから取り出して広げました。


桜の下・池の前という、絶好の「ごろ寝ポイント」にシートを敷いて、
少しお話をして、鞄を枕に横になったら、数分で、
本格的に、ぐうぐう寝ていました、1時間弱でしょうか。
ひらひらと桜の花が、定期的に落ちてきていました。


肌寒くなってきたので起きると、日が暮れかけて、
人も少なくなっていました。池の方を見て、たそがれました。
みかんを手渡してくださったので、その場で食べたのですが、
案の定、手もズボンもビショビショになったら、
ウエットティッシュをくれました。


イチャイチャはしませんでした。



ぼーっとたそがれていた時間が、

全体の半分くらいだったのではないかというくらい、
ボートや、石垣の上や、芝生のビニールシートで、
たそがれたいだけ、たそがれました。


Tさんは、僕より年上の方なのですが、
僕が小学1年生のときに、6年生のお姉さんに
遊んでもらったときの、懐かしい感覚が急に脳に広がってきて、
シートに横になって池を眺めていたとき、じーんとなりました。
夕方まで、砂場で遊びたいだけ遊んで、
ブランコに乗りたいだけ乗って、好きなアイスを買って
食べさせてくれたときのような、そんな幸福感でした。


夕方6時に、握手をしてもらって、お別れしました。
こんな優しくて、ぬかりなくて、きれいなお姉さんに
遊んでもらえて、僕は、何かもう、申し訳ないような、
どうしてよいか分かりません。