Mー1グランプリ2009の感想

昨日、M−1を昨日見たので、
自分のためにも感想をまとめておこうと思います。


ところで、笑いの重要な要素のひとつは意外性だと思います。
そして、知名度があるコンビが辛いのは、
どんな漫才をするのかをすでに知られているので、
意外性が感じられにくくなっていることです。
特にM−1を会場まで見に来ているお客さんは、
漫才を飽きるほど見ているはずで、そうなってくると、
飽き飽きして、笑えなくなってくると思うのです。


で、笑いが起きにくい空気と、起きやすい空気があって、
その空気によって、演者の緊張が強まったり弱まったり、
その緊張の程度によって、テンションの高さ、
気持ちの入り具合が変化し、出てくるアドリブや、
台詞のイントネーションに響いて、さらにそれがまた、
笑いの空気にフィードバックされる仕組みだと思うのです。


で、何の話でしたっけ。
以下、登場順に個別に感想を書きたいと思います。



ナイツ

もう見飽きたのではないでしょうか。
ああ、いつもおもしろいなという印象でした。
初めて見たら、斬新でおもしろいと感じるのだろうなあ
と冷静に見てしまいました。僕でさえそうなのですから、
会場のお笑いマニアたちは、もっと冷静だと思うのです。
漫才後のテレビ画面から、不穏なものを感じました。


ネタは細かいものを精密に数多くぶつけていくもので、
止めどのないボケと、丁寧なツッコミのスタイルにより、
コンスタントに笑いが起きていて、
時間あたりの笑いの数は、最多ではないかと思いました。
ただ、ネタが一連の「自己紹介」として、
表面的に繋がって見えても、ひとつひとつが短く切れていて、
その結果、あとで展開していくための材料となる
積み上げが弱く、爆笑に至らなかったと推測しました。



南海キャンディーズ

山ちゃんの台詞が上滑りしている感じがしました。
おもしろい言葉のはずなのに、どうも笑えませんでした。
なんでしょうか、見ていてむずむず恥ずかしくなるような、
変な居心地のわるさを感じてしまいました。
前に見たときは、すごくおもしろかったので、
この日の会場の空気が原因ではないかと思いました。


最後はドタバタになって、舞台上を動きまわりましたが、
これも裏目に出たような形になり、
中途半端な状態で終わってしまった感じがしました。
やはり中央にマイクがあるので、
真ん中にコンパクトにまとまって言葉で笑わせる方が、
観客も集中できてよいと思いました。
人が右や左に動くと、マイクも気になるし、
視点が三点になって、視線が錯綜するので、
笑いも分散しがちになるのではと思いました。



東京ダイナマイト

しゃべりながらの登場で、
つかみの上手さが、さすがだなあと思いました。
あと、これは人のこと言えないのですが、
ハチミツ二郎氏の声が、小さくこもっていて、
語尾が聞き取りにくいのが、残念だと思いました。
声がこもって突き抜けず、
CMネタは分かる人にしか分からなかったり、
中盤からの長い長いボケ(約50秒)もあって、
長いトンネルを歩いているような暗い気持ちになりました。


長いボケで、溜まりに溜まったボケエネルギーが、
消化不良という感じで、勿体無いと思いました。



ハリセンボン

ツッコミの春菜さんが、すごく緊張している様子で、
気持ちが入っていっていない印象を受けました。
感情が高ぶってキレるところや、泣き叫ぶところが、
一番の見せ場だと思うのですが、そのテンションにまで、
気持ちを持っていけていないまま進展してしまい、
形式的なキレツッコミや、泣き叫びをすることになり、
そうなると、わざとらしさが出てしまい気の毒でした。
ネタも単発的な感じで、膨らみがない感じがしました。




ここまでで、僕の勝手な推測ですが、
お客さんはせっかくM−1を観に来たというのに、
大爆笑したいのにできないというストレスが、
かなり溜まっていたのではないかと思うのです。
僕もテレビを見ていて、どうなってるんだと思いました。
そのストレスの捌け口に、
笑い飯はなったのだと思いました。



笑い飯

「鳥人」という設定は、
これまでのコンビが「ストーカー」や「煮物」といった
あるあるからボケていたのに対し、
ないないからの、鳥人あるあるでのダブルボケという、
意外性に富んだというか、ほとんど狂気のネタで、
爆発すると思ってゾクゾクしました。


ただし、鳥人という架空の生き物が前提となると、
想像力のある人にしか受け入れられないのではという不安と、
そのファンタジーへの導入をいかに無理なく行うかが
鍵になると思ったのですが、「待ってました」という感じで、
素晴らしくはまって、ようやく笑い飯で、
M−1の足が地に付いた感じがしました。


島田紳助松本人志が笑っている絵が、
それぞれ3回も抜かれて(これまで渋い顔をしていた)、
紳助氏が100点を出し、
テレビ全体で流れが作られつつあると思いました。
鳥人→俺にもやらせろ→手羽真一までの飛躍で、
大きな拍手が起こる爆笑が5回もありました。



ハライチ

最初の、子犬が死んだという静かな出だしは、
大丈夫かと思いましたが、このコンビのトーンに
切り替えるのに成功していてすごいと思いました。
「CM挟んでよかったですね」とかの、
アドリブもあって余裕を感じました。


ノリボケというスタイルが斬新で、
徐々に程度がひどくなって、それに伴って、
テンションもどんどん上げていくノリボケの人の力が
すごいと思いました。笑い飯で空気が温まった
というのもあるのではないでしょうか。
今後、ネタを振る方がもう一段階発明を加えて、
展開に別次元への飛躍が加わったら、
最終決戦まで行くと思いました。




ここまで書いて、疲れてしまいました。
それにしても、ずいぶん
偉そうなことばかり書いてしまいました。
すみません。勝手な感想なので気にしないでください。



それで、

パンクブーブーが、やはりすごいと思いました。
ボケの勢いを汲んだままツッコミを入れるのが、
とてもすごいと思いました。


NON STYLEは、とてもうまくてミスがなく、
しゃべりも動きも、表情も完璧だと思いました。
ものすごい練習量を感じましたが、なぜか、
ほとんどおもしろさを感じませんでした。
最終決戦の後も、パンクブーブー笑い飯のことばかり、
審査員がコメントをして、NON STYLEには、
一切触れていませんでしたし、どういうことなのでしょうか。


笑い飯は戦略のなさみたいなのが、戦略なのでしょうか。
わかりませんが、おもしろかったので、
おもしろくなるように計算した結果なのだろうと思いました。
鳥人のネタも、本当は最終決戦でやろうとしていたのでは、
フワフワした流れを自ら進んで止めに行ったのでは、
と勝手に想像してしまいました。



M−1グランプリの番組全体としては、
5年くらい前は自然に盛り上がっていたと思うのですが、
近年は、無理やり盛り上げている印象を受けました。
もうあまり、そういう流れでは
なくなりつつあるのかというさみしい気持ちもしました。


それにしても、やはり、
プロの芸人さんたちは本当にすごくて、
カッコいいなあと思いました。