自転車をもらってから毎日のっている。
大げさではなく、本当に毎日のっている。
体重が一キロ増えた。すぐに理由が浮かんだ。
通勤時に駅まで往復三十分くらい歩いていたのが、
十分に短縮されたからかもしれない。
それにしても楽だなあ。
自分の手の甲を見て、
ぼくが子どものころによく見ていた親の手みたいだ
と思うことがしばしばある。
しわがあって、血管が浮き出て、全体にはりがない。
まあそうなるよなと思う。三十四だし。
お酒も減ったし、食事はたくさん食べることよりも、
うまいものを少しだけ食べるのを好むようになった。
モテなくていいと思ったりしている。
できることしかできない、やりたいことしかやれない。
限界のようなものが見えている。
だから、年をとるのはいやだなと思っていたのだけど、
いや、よくよく考えてみるとそうでもないなと思う。
二十年前よりも、十年前の方がいいと思うし、
十年前より五年前、五年前より去年、去年より今がいい。
なぜだろう。きっと、すこしずつではあるけど、
自分自身を生きられるようになってきたからじゃないかな。
鎧のような自意識を脱いで、呼吸が楽になったような。
昔の写真を見ると、自分で言うのもあれだけど、
いまの方が友だちになりたい感じの雰囲気になっている。
でもまだまだ。自分からもっと解放されたい。