『インターネット的』を読んだ。散歩した。撮りためてた番組を見た。

前回の日記、まだ10月までしか書いていなかった。
11月もいろいろあって楽しく生活できたと思う。


ところで、『インターネット的』という本を読んだ。

インターネット的 (PHP文庫)

インターネット的 (PHP文庫)

糸井重里さんが10年以上前に書いた本。
それが今年11月に文庫化された。
インターネットによって世の中はこうなるのではということが、
「ほぼ日」をやって肌で感じて見えてきたことをベースに、
とてもフラットに書かれている。10年前に発行されたとき、
この本はあまり読まれなかったらしい。それは、
本の最後に新しく追加された「続・インターネット的」によると、

大きな理由のひとつは明らかです。この本には
「インターネットは儲かるぞ」って書かれていないのです。

たしかに本に書かれていることは、
気が短くて早く儲けたい人にとっては、
もどかしい気持ちになっただろうなと思う。
生き方や、人間観や、心がまえとかが中心に書かれていて、
それをまずはしっかりしていかないと、

ビジネスは「利益のため」だけの戦争になってしまいますし、
作品は「当てる」ためだけのものになってしまいます。

とあるから。本を売るためだったら、あの糸井さんなのだから、
当てようと思えば当てることができたと思うのだけど、
そんなことはしない。そんなことしていてはよくないぞ、
ということがここに書かれていて、その通りにしている。
で10年たって、そのことが「ほぼ日」で見事に実証されて、
世間では「いまの時代が予見されている」とか、
「ぜんぶ、ここに書いてあるじゃないか」と、
いまになって再評価されているそうだ。


10年前にインターネットについて書かれた多くの本は、
ぱっと売れたかもしれないけど、いまでは古臭くなっている。
ITの先端であっちだこっちだと走り回っている人たちの間を、
ほとんど脇目も振らずに、「ウサギとカメ」のカメみたいに歩んで、
みんなのお手本みたいなところに達しているのに感動してしまった。
(2012年には独自性のある事業で成功している企業に贈られる
ポーター賞」を受賞している。ほぼ日刊イトイ新聞 - ほぼ日ニュース
ほんとそういうことなんだろうなと思う。


この頃よく感じるのは、
早く儲けたいインターネット的でない人たちが、
この「インターネット的」なことがカネになると、
流行りに飛びつくような風潮というか、そういうのがあると思う。
その流れはいいこともたくさん生むと思うけど、
やっぱり長くはもたない気がする。

ぼくは「伝えるために」日々を過ごしているわけではないわけで。
なにをする、なにをしている、どうしようとしている、
どういう場面にいる……伝えるのは後回しにして、
感じたり思ったり考えたり動いたりしています。
その過程そのものが、「伝えたいこと」だと思っています

というところに、とてもぐっときたのだった。
生きることが伝えることになっているというか、
「消費のクリエイティブ」というキーワードが出てくるのだけど、
お金や時間を創造的に使うこと、遊んで楽しむこと、
よい環境にいること、よい気持ちでいること、
豊かに感じて考えて、それがよい物事を生むことにつながる。
こうやって地道にブレずに、長く自然にやっていくことが、
自分にも、自分以外にもいいんだろうなと思った。



土曜は、近所の友人のオカンダと散歩した。
自宅から半径5キロも出ていないところを歩きまわった。
どっちへ進路をとるかの基準は、
行ったことない、行かなさそう、おもしろそうな方を選ぶ。
http://instagram.com/p/wQbMWCCwlX/
結果、こんな道も通った。行き止まりは意外と少なく、
引き返したのは2回ほどだった。駅で言うと2駅分くらいの距離で、
区も跨いでない完全な地元なのに、知らない道だらけ。
いきなり小学生の頃に自転車で数回だけ通った道に出たりする。
20年くらい前の感覚が浮かんできて揺さぶられる。
旅とかの移動には時間と空間の要素があると思う。
空間的にはたいしたことないのだけど、時間的に大移動すると、
思えば遠くへ来たもんだ的な気分になる。
移動して場所的に遠くへ来たことが、
ノスタルジーを引き起こすこともある。おもしろい。
断片的に覚えているポイントとポイントが、
ふいにつながると「おお、ここにつながるのか」と感動する。
シナプスがつながるみたいな感覚。本能的なうれしさがある。
ラストは互いの家から徒歩10分ほどのところにある
うどん屋に入って、鍋焼きうどんを食べた。
ぼくは高校のとき毎日この店の前を通っていた。
入ったのは30代になってから。瓶ビールを飲む。


家に帰って、撮りためていたテレビを見た。
「地球イチバン~世界一服にお金をかける男たち」
「プロフェッショナル仕事の流儀~高倉健スペシャル」
浦沢直樹の漫勉」
どれもおもしろかった。

「地球イチバン」はサップという
コンゴに昔からあるファッション文化と、
サプール(サップをするひとたち)の特集だった。
コンゴのひとたちの平均的な月収は3万円で、
サプールはその半分以上を服につぎ込んでいる
(サプールは職業じゃなくて、ふだんは普通に働いている)。
服はブランド物で普通に10万円とかする。
各地域で代表みたいなサプールがいて、
彼らが集まってお祭りみたいなことをしている。
サプールは街のヒーローで、子どもたちの憧れでもある。
ファッションにはお金が必要なのでサプールたちはまじめに働く。
貧しいけど着飾ることで意識が変わり、誇りを持つようになる。
ケンカ早かった男が、サプールになってから、
落ち着きのある紳士になったりしている。
意識が変わると、人へ及ぼす影響が変わる。
影響を受けた人たちから及ぼされる影響で本人も変わる。
よい循環が生まれているという内容だった。
これも「消費のクリエイティブ」だなあと思った。


浦沢直樹の漫勉」は、漫画家の浦沢直樹さんが、
漫画を描いている過程をカメラで記録して見せてくれるもので、
へええ、こうやって描いてるのかと思った。
浦沢直樹さんの他に、かわぐちかいじさん、山下和美さんの
漫画を書く過程もものすごく接近して見ることができた。


番組を見おわって、
深夜2時にシャーペンで絵を描きたくなって、
amazonで検索をしたのだけど、
そういえばあったかもと家の中をさがしたら、
むかし祖父が使っていたものが何本も出てきた。
芯もあった。0.5mmのBが使いたいと思っていたら、
それもあったし、amazonで買おうと思ってたものもあった。
http://instagram.com/p/wRqCNICwi-/
祖父は亡くなる手前まで、
ほぼ毎日、製図台に向かって仕事をしていた。
仕事をすることが生きることのような人だった。
このシャーペンは図面を書くときに使ってたもので、
祖父の仕事部屋から父が持って帰ってきたのだった。
これ、おじいさんが握ってたんだなと思った。




また、11月の日記書けなかった。