リア充プレイ〜オトナの修学旅行〜

「リア充(りあじゅう)」



という言葉がある。ネットに入り浸ることなく、
リアル(現実)の日常生活が充実している人を指す
ネットスラングです。



(リア充イメージ図)


リア充の具体的な特徴を挙げると



「恋人や友人付き合いに恵まれ、サークル活動や飲み会へ参加する」


ことなどがあるわけですが、僕なんかは、
失われた10年を取り戻す」というのをやったくらい、
ネットに軸足を置く、リア充から離れた存在で、
となると、反射的にリア充に対する感情は、
羨望から嫉妬、そして敵対心へと遷移し、


「リア充とは、友達になれないな」


なんてことを
思うようになっていたわけです。



そんな中、

いつも変なことをして遊んでいる、
僕と同じくリア充から遠い、心に小さな闇を抱えた仲間たちで、
箱根に一泊二日で旅行に行くことになったのでした。
総勢一三名。女子七名、男子六名の旅です。


旅行の直前になって、
「あれ?ちょっと待てよ」と思いました。
このシチュエーションは、どう見ても、




リア充そのものじゃないか。




男女混合で温泉に一泊二日。
メンバーのほとんどがネットで知り合ったとはいえ、
これだけ聞いたら「The リア充」です。まいりました。


「リア充とは、友達になれないな」


と思ってきた手前、
素直にこの状況を喜ぶわけにもいかない。
けれども正直なところ、せっかくの機会を活かして、
できればリア充への足掛かりにしたい。悩む。


そんなジレンマを解消する
よいアイデアが浮かんだのでした。
「プレイ(遊び)」です。この旅を、




「リア充プレイ」




として、リア充ごっこに変えることで、
恥らいや後ろめたさを捨てることができ、
あわよくば、気づかないくらい自然に、
本物のリア充になれるのではないか。
なんてことを思ったのです。




非モテ非モテと嘆くより、
進んでリア充になりましょう。




皆でリア充になってやろうじゃないか。




ということで、今回の旅のテーマは、
「リア充プレイ」になったのでした。







旅のスタートは、

小田原駅。一二時に現地集合です。
皆が電車を乗り継いでやってきます。


ふと思ったのですが、
この「現地集合」という集まり方は、リア充っぽくない。
きっと本物のリア充だったら、電車ではなく、
都内からクルマで来るに違いない。
何台かで乗り合って、




「ぼくらのーじーゆーうをー♪」




などと歌いながら、わいわいがやがや
ラブワゴン気味でやって来るに違いない。
というのは、僕の思い過ごしでしょうか。


僕は静かに、東海道線の快速アクティに乗りました。
土曜の昼前のアクティは、なかなか混んでいました。
立ったまま携帯でTwitterを見ると、

「アクティなう」
kasahiさん

「アクティなう」
小宮山さん


とつぶやいている今日のメンバーを発見。
どうやら僕らは同じ列車に乗っているようです。


ところで、すぐにTwitterをチェックした
僕が言うのも何ですが、リア充は、非リア充と比べて、
ネット使用時間が比較的短い傾向にあるらしいです。
ですからリア充は、こんなに
「なうなう」言わないのではと思いました。


しかも、同じ列車に乗っていると知りながらも、
積極的に接触しようとしない僕の内向性。
自分の非リア充度に、ゾクゾクしてきました。



そうこうしているうちに、




小田原駅に到着。降りてすぐ、
ホームでひのじさんを発見。
同じ列車に乗っていたのでした。
そういえば、ひのじさんはつぶやいてなかったなと思ったら、
この人は車内でずっと、業田良家氏の漫画、
『自虐の詩』を一気読みして、
涙を堪えていたそうです。




そんな女、絶対リア充じゃないよ!!




週刊宝石に連載されていた、幸江とイサオの物語。
せめて『のだめカンタービレ』とかにして欲しかったです。


その後、改札口でkasahiさん、小宮山さんと合流。
hassyさんはかなり前から到着していて、
写真をすでに百枚近く撮っていました
撮りすぎです。これからですよ!)。
たま氏はロマンスカーの中で缶ビールを空けて、
ロマンスの欠片もない登場。


全体的にリア充でない感じが漂っていましたが、
他のメンバーも続々と集まると、賑やかになって、
リア充っぽくなってきました。





こんな人数での旅行は久しぶりです。
しかもいろんなジャンルの人たち(IT系が多いけど)が
集まってです。わくわくしてきました。
そして、この様子はどう見てもリア充そのもの。
しかし、これはプレイ。リラックスしていこう。
こうして、我々はプレイを通して、バーチャル・リア充から、
リアル・リア充へと進化していくのです。


ということで一発、集合写真を撮ることに。
プレイとして、リア充になりきった我々の掛け声は、
もはや「ハイ、チーズ」ではありませんでした。













「ハイ、リア充!!」










リア充たちの旅が、今、始まる……!








ここからが

怒涛のリア充プレイ編なのですが、
もはや説明する言葉はいらないと思います。
写真を見て感じでください。


といいつつ簡単に補足していきます。
まず向かったのは早川駅。東海道線で小田原から一駅。





さあ、リア充っぽくはしゃごうじゃないか
ということで、
普段とは違う、はしゃぎっぷりの皆さん。

う、うわーい!(まだぎこちない)




早川は港の街で、この辺りで
うまい魚料理を食べるのです。



「港のごはんや」さんに入りました。



女子に囲まれてリア充感を演出(慣れない状態に緊張気味)。



僕はアジ丼を食べました。うまい。



ところで、ここは港で魚が豊富だからか、
あちこちに猫がいて眠っていました。猫天国でした。







アクシデント。

その後、いったん駅まで戻って大雄山線に乗ることに。
ところがここで、アクシデント発生。


この旅が、リア充プレイであることを忘れないために提げていた
戒めの「リア充ボード」が風に飛ばされて、
冷たい海に落ちたのでした。



海に落ちたリア充。


完全に手の届かないところに行ってしまったリア充。
この風のいたずらは、もしかして、
リア充ってのは、




お前の手に届くようなものではないのだ!!




というリア神からのメッセージなのでは。
ガックリして早々にボードを諦めかけたのですが、
この諦めのよさは、リア充っぽくない(たぶん)。
ひとつ何でもイベントにしてしまうリア充気質を発動させて、
ボードを回収しようじゃないかと奮起して、
身近を探すと、変なロープ発見。



水面に垂らす。


ボードの紐部分に掛けて、ロープごと引っ張り上げる。
女子との共同作業。作業の内容は置いといて、
リア充ならではという感じがする。
こうした何気ないイベントを通して、
恋が芽生えたりするのだろうか。常にリア充手探り状態


そして、ついに。



リア充取ったどー!!



別の角度から。



「いやあ、一時はどうなることかと思ったぜ」


すごい達成感を得ました。
風のいたずらは、リア神からの試練だったのです。
ところでリア神って何?



最乗寺を目指す。

大雄山線に乗って終点の大雄山駅まで行き、
さらにバスに乗り換える。今回の旅はバスが大活躍。
バスはぐるぐると山を登って行き、
気温はぐんぐん下がっていきました。



天狗がいるという最乗寺へ到着。
森と林に囲まれたもの長い階段を登っていきます。
平均年齢三〇歳。若干、息が切れ気味です。
しかし、リア充はいつも元気いっぱい(のはず)。
写真を撮る時は「ハイ、リア充!」と言って、
勢いを付けてバシバシ撮っていきました。



We

are

the

リア充!



We

are

the

リア充!


どうですか、このむせ返るようなリア充感
免疫のない人が見たら、火傷をすると思います。
僕もこれがプレイでなかったら、
どこか穴を探して入りたいくらいです。
すでに一日のリア充摂取量を大幅に超えて、
立ちくらみがしてきました。リア当たりというものです。


それにしても、メンバーたちのリア充っぽいポージングも
小慣れてきて(このポーズがリア充なのか分かりませんが)、
プレイをしているうちに、リアルに楽しくなってきて、
「ああ、リア充だ」とリア充の空気を、
胸いっぱいに吸い込んだのでした。
リア充プレイのコツは、

・体全体を使う
・笑顔
・裏ピース
・お茶目
・逆光(特に重要)


だと思いました。



帰りのバスを待つ間、

kororaさんがおもむろにウクレレを取り出して弾き始めました。
リア充に欠かせない要素、それは、


「音楽」



十名以上で取り囲むと、ちょっとしたストリートライブです。
知らないおばさんが、僕らの輪の中に入って、
演奏を聞きに来たほどでした。



アーティスト名は「リア充」。







そして宿へ。


おんりーゆーという足柄の温泉宿泊施設へ。
「おんりーゆー」というネーミングに不安を覚えましたが、
新しめの施設で広くて清潔で、居心地のよいところでした。
とりあえず、温泉に入ろうということで温泉に。
広い露天風呂があって、裏山には川が流れて、
空は濃紺、木立は黒く、風情があっていい感じでした。



風呂からでたらビールですよ。乾杯。
この辺りにはアサヒビールの工場があって、
工場から直送の新鮮なビールが大変うまい。
バイキング形式の料理も、大変うまい。まいった。


女子の部屋がとんでもなく広いというので見に行くと、
なるほど格技場のような広さの和室。



おおー、たしかに広い広いと歩き回っていたら、
足の裏に画鋲のようなものが刺さりました。
ギャッと思って見ると、猫のピンバッヂが



hassyさん(女忍者)の持ち物でした……。


この後は、リア充が夜にやりそうなこと、
カードゲーム、フルーツバスケット、枕投げ、大喜利など
ビールを飲んでやりたい放題の大騒ぎで、
メチャクチャになりました。
各人の心の闇が解放された瞬間でした。
全員揃いの服を着ているのも、見ていておかしい。
その混乱の様子をどうぞ。



枕ファイト。

ジャンプキック。

枕投げ後、疲労困憊。

膝が肉離れを起こしそうになる。

布団を剥がれて取り囲まれる。

のしかかられる。

人文字。




全員、どうかしてました。




もはやこれがリア充なのかどうかも、
さっぱり分かりませんが、我々が思うリア充というのは、
こういう感じではないでしょうかということです。


あとショッキングだったのは、フルーツバスケット
「彼氏か彼女がいる人!」と言ったら、




十三人中、三人しか立たなかった




ことです。大丈夫なのか、この集団。
現実を叩きつけられた瞬間でした。
「ま、まあ、プレイですし」ということで、午前1時消灯。
徹夜する体力は誰にもありませんでした。




翌日も、

リア充プレイは続きました。
全員、よい意味で肩の力の抜けて、
また昨日の大騒ぎで何かが吹っ切れたようで、
自然なリア充プレイになり、ついに堂に入ってきました。


それでは、確実に、
リア充になっていく我々をご覧下さい。



お茶目なポーズ。

群像。

ハイ!リア充。裏ピースを多用。


この勢いで、アサヒビールの神奈川工場を見学。
20分間無料で飲み放題なので、総員、がぶ飲み態勢。
工場から出ると、声が一回り大きくなってました。
さらに、何か楽しくなって、芝生の斜面を転げ落ちる。
これも、たぶんリア充。



We

are

the

リア充。



We

are

the

リア充。




もうこのくらいでいいだろう。




撮影されるしょーたろーくん(照れている)。

うわーい!

再び逆光。



この後、とてもうまい寿司懐石のお店で、
日本酒を飲みながら、食事をしました。
いやあ、本当にうまい。






総括。

完全手探りでリア充を模索した二日間。
このレポートを見る限りでは、完璧なリア充になれている
と思うので、リア充プレイ成功だったのではないでしょうか。
とにかく気を抜くと、プレイであることを忘れるほど楽しく、
もしかすると、瞬間最大風速的には、
リアル・リア充になっていたのではないかと思いました。


そして、あらためて驚いたのは、
今回のメンバーのほとんどが、
ここ1年くらいの間にネットを通して知り合っている
人見知り集団であったということです。
それがリア充プレイで、
「We are the リア充」になれてしまったのだなあと、
しみじみ思いました。


また、ネットがなければ、このグループも旅も、
存在しなかったというのも不思議な感じです。
ネットはリア充に相反するものと思われていますが、
ネットは今後のリア充の実践において、
欠かすことのできない要素だと思いました。
Twitterを使っての情報伝達、ウェブでのスケジュール調整、
うまい店、観光スポット、おもしろい遊びの検索なども。



というわけで、今後のリア充像を思い浮かべると、
リアルとネットを組み合わせた新しいリア充。




ハイブリッド・リア充




的なものになっていくのではないかと思いました。
リアルの顔と、ネットの顔をよい意味で使い分けて、
近づきすぎず離れすぎず、自分が心地よい間柄で遊ぶ。
これが、リアルに固執するあまりに自虐的になり、
閉塞的になってしまった非モテを打ち破る
ひとつの鍵になるのでは(なってほしい)と思いました。




あともうひとつ

リア充に大切なのは「体力」だと痛切に思いました。
枕投げで全身が筋肉痛になりましたし、
旅の終盤はヘトヘトになっていました。





リア充=体力




よく遊び、よく食べ、よく眠ると、動物としての
人間本来の生活に戻っていくのではないでしょうか。
それで、本能が呼び覚まされ、三大欲求が喚起され、
野生動物がつがいになるかのように、
自然なフォーリンラブへと展開し、
リア充は結晶するのではないかと思いました。




みなさん、どうもありがとうございました!
また遊びましょう。プレイ、リア充。




メンバーの日記。

イッセイ氏
小宮山さん
kororaさん
ひのじさん
kasahiさん


おまけ動画「リア充、坂を転がる。」