北沢タウンホールで文芸漫談を観た。

北沢タウンホールで文芸漫談を観た。イッセイ氏と。
文芸漫談とは小説家の奥泉光さんといとうせいこうさんが、
毎回有名な短編小説を取り上げて、
作品と作家についておもしろく鋭く切り込んでいく、
漫談形式のとてもためになるトークイベントです。
生で観たのは初めてで、ぼくは書籍化されたものを
読んだことがあるだけだったのでした。


今回のテーマは志賀直哉の『暗夜行路』。
これまででもっとも長い作品だったそうです。
というか長編小説ですね。このイベントまでに読もう
と思っていたのだけど読めなかったのですが、
読んでなくてもすごく笑ったし勉強になった。
最前列で観たのですが、
奥泉さんの手持ちの本に付箋がたくさん貼ってあって、
付箋にメモや、ページには線が引いてあって、
なるほどこうやって人前で説明して楽しませるためには、
もちろんだけど徹底的に読み込んでおかなくてはいけなくて、
漫談をする側はすごい勉強と覚悟がいるのだなと思った。


メモは取らなかったのですが、
印象に残ったポイントは次のようなもの。

主人公時任謙作は「まいる」か「つつしむ」のどちらか。
とにかくよくまいってしまう。
三人称単数と三人称多数の違いによる空間のきつさ。
快か不快。他者が不快。自分が取り込むと快になる。
女性を上品・下品、美しいか・そうでないかみたいに
間がなくてデジタル的にとらえる。
単細胞のアメーバのような男。
性欲がすごい一方で世界平和とか人類への貢献を考えている。
身近な生活と、遠くの宇宙のどちらかでこれもデジタル。
中二病のような主人公であり、元祖セカイ系
妻を頭では許していても、無意識では許せていない。
許せていないことが行為として表出してしまう。
「播摩」というよくわからない恐怖。夢魔。
風景描写がすごい。いい旅・夢気分みたいにあちこち行ってる。
小説の神様は、紀行文の神様なんじゃないか。

終わってから焼き鳥屋に入ってビールを飲んだ。
次はトーマス・マンの『ヴェニスに死す』で、
六月にあるらしいのでまた行きましょうという話になった。