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言っておきますが、私は元気です。たぶん。

生活

金曜の夜に高田馬場のあげ屋二号店へ行って、
ひとりで呑んでいた。二十三時半、外は小降り。
焼き鳥とポテトサラダと栃尾揚げでビール二杯。
黄金サバと亀齢純米吟醸。変えるわー、日本酒は、
刺身の生臭さを、見事に旨味に変えるわー。
と舌鼓を打っていたら、ひのじさんが来た。
土曜日は、凸凹キッチンでランチ。

いつのまにか腕時計の皮のベルトが壊れていた。ので、
ヨドバシカメラへ行ってポジティブなのを買った。
時計のベルト取付けを待つ間に、
無印良品で肌着を上下二つずつ買った。
それからLevi'sのズボンが半額になってたので買った。
ユニクロでジム用のウェアを上下買った。

机まわりの片付けをした。捨ててもよい紙類を捨てて、
読もうとして積んであった本をひとまず棚に移動させた。
モニターの裏に積もっていた埃を拭きとった。
植木の葉っぱが落ちていたのを拾ったり、
線香を入れ替えたりした。机を拭いた布は茶色くなった。

蚊取り線香を焚くと、山口県の祖父母の家を思い出す。
その家はもう他所の家になってしまったけど、
裏山があって井戸水が冷たい涼しいところだった。
網戸には小さくてかわいい雨蛙が何匹も付いていたので、
その様子を夏休みの日記に描いたこともあった。
山から虫が来るから、広い縁側に蚊取り線香を置いて、
煙と夕飯の匂いやバスクリンの匂いや山の匂いがまざって、
それが僕にとっての山口の家の匂いだった。
家の主だった祖父はもう二十年くらい前に亡くなっている。
いまでも線香も焚いていないのに、ふと山口の家の匂いがすると、
「あ、おじいちゃんが来てる」と思う。
自分が先祖からずっと途切れずに繋がっているという実感は、
生にとってすごく頼もしくて、時空を越えて感謝したくなる。

土曜、日曜ともジムに行って筋トレをした。
間違ったフォームでやると、正しいフォームでやるより、
十キロぐらい余計に持ち上げることができてしまう。
でも体に負担ばかりかかって、筋肉が付かない。
負荷が軽くても正しいフォームでやる方が効果が高い。
あせってはいけない。先に書いた祖父がよく言っていた
「慌てる乞食は貰いが少ない」
最近、とても忙しい。忙しいとなにもできない。
帰って寝るだけになると、夢想する時間がなくなる。


おもしろいことをしたい。という欲求は生きる上で厄介。
おもしろいことがなくても、玩具の兵隊のように働いて、
寿命を終えられたら、それがいいと思う。
でも欲求があるとそうはいかない。生活に追われ、
おもしろいことをしたい欲求が解消されないのが続くと、
鬱になる。河合隼雄さんが何かの本で、
鬱病はガス欠じゃなくて、出口が見えなくなってるだけ、
というようなことを書いていた。なるほどなと思う。
バランスよくやりたい。でも、あわてない。


ジムの帰りにTSUTAYAに寄ったら角川文庫の新刊が並んでいて、
中村航さんの『あのとき始まったことのすべて』を手にとった。
先月の二十二日に発売されていたのだけど、
なんかこわくて近寄れなくて確認できていなかった。
おそるおそる見たら、たしかに僕が書いた解説があった。
送っていただいていた見本では確認していたけど、
こうして誰の目にも触れるところに並んでいるものにも、
やっぱりある。というか、もしかしたら、
僕に送られたサンプルにだけ「しーなねこ」と書いてあって、
実際に発売されたものは別の人が書いてました!テッテレー!
みたいな「どっきり」ではないかと、そう、
そういう不安があったのだ!
で、その辺のTSUTAYAの文庫で確認できたから、
いま、ようやく、どっきりじゃなかった!!
と安心したのでした。夢だけど、夢じゃなかった!


言っておきますが、私は元気です。
たぶん。