よく飲んでいる。R25、教員飲み会、たのしい高円寺、かに道楽、ゲシュタルト療法

2月28日(金)

半年ほど通った小説教室が終わって、
その修了式のような飲み会が有楽町であり、先生を囲んで、
ビールをがぶがぶ飲んで、結局朝まで何人かでカラオケにいた。


教室に通うことで、小説を書く技術が、
めきめきと上達したかというとあれだけれど、
実際に小説を書いて暮らしている先生の話を聞いたり、
別の仕事をしながら小説を書いている同窓生と触れ合うのは、
小説を書こうという気持ちが萎んで忘れ去ってしまうのを、
防ぐのにとてもよかった。つねに「何を書こう」とか
「どう書こう」といったことを考え続けてきた気がする。
そして、先生から「考えすぎ」「インプット過多」という、
ありがたいお言葉を二ついただけたので、それだけでも、
教室に通ったことの意味は大きかったといえる。


銀座のあたりで解散となって、みんなは有楽町へ行った。
ぼくだけ東海道線で帰ると言って新橋へ向かった。
そこまで全然平気だったのに、電車に乗った途端、
気持ちがわるくなって途中下車を何度かして家に帰った。

3月1日(土)

5時間ほど昼寝をした。それからジムで運動をして、
オカンダと上大岡で会った。目的はなく適当に歩き出し、
上大岡から春日神社へ行って参拝。日野中央公園を抜けて、
母校のあたりを歩いていたら、七時頃になったので、
ハングリータイガーというステーキハウスに入ろうとした。
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が、土曜の夜は家族連れがわんさか押し寄せて、
満車の駐車場の前にクルマが何台も詰まっている状態で、
まったく入ることができずにやめた。
ぼくも小学生の頃の土曜の夜は家族でクルマに乗って、
あさくまへステーキを食べに行ったのを思い出して、
懐かしい気持ちになった。結局、伊勢福にした。
伊勢福は蕎麦屋だけど、蕎麦以外にもいろいろやっている。
料理の値段はどれも千円を越えてちょっと高いけれど、
味がうまいので文句はない。一階は二十席くらいの、
広々とした造りで、いつも地元の常連らしき人がいて、
上品にお酒を楽しみながら、店の人と世間話をしていたりする。
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牡蠣フライ定食にした。やっぱりうまかった。家に帰って、
依頼されていたエクストリーム出社の原稿を書いて、
読み途中の『スミヤキストQの冒険』の続きを読んで寝た。
おもしろい。次回の文芸漫談のテーマがこの作品なのだ。

スミヤキストQの冒険 (講談社文芸文庫)

スミヤキストQの冒険 (講談社文芸文庫)

幻想的な話なので、これを読んでから布団に入ると、
引き続き幻想的な夢を見ることが多い気がする。それと、
猫の顔の描かれたトレーナーを寝間着にしているので、
猫の夢を見ることが多くなったのは、たしかにそうだ。

3月2日(日)

昼前に起きて、ぬるくなった湯船で半身浴をしながら、
本を読むことのが最近の好みで、よくやっている。
自室で線香をたいておくと、冷たい空気が、
浴室の天井に付いた換気扇に吸い込まれていく過程で、
ぼくの鼻先をくすぐっていくのだけど、
ぬるいお湯の感触と線香の匂いが合わさると、
山口県にある祖父母の昔の家を思い出させて、
それは長期の休みで家族で滞在していたところなので、
とても落ち着くのだった。冷たい空気は、
城跡だった裏山から迫ってきたのものだと思う。
合戦場だったこともあって、祖父は襲ってきた女の幽霊を、
柔道で投げ飛ばしたら、畳の下に消えていったらしい。


夜におのしゅうさんに誘っていただいた飲み会へ行った。
茅ヶ崎駅でおのしゅうさんと待ち合わせてけっこう歩いて、
本当にこんなところに飲み屋があるのだろうかという、
静かな住宅街の奥に突然、テラスのある洒落た洋風の建物があって、
入ると天井が高く開放感があり、ビアホールのようだと思った。
敷地内には酒造があり、作りたての湘南の地ビールや、
ビール酵母を材料にして作ったパンも味わうことができる。


会は合コンのようなかたちだった。
おのしゅうさんの前の職場の同僚だったOさんと、
Oさんの奥さん、奥さんの同僚の女子の方々。
男子は、Oさんとおのしゅうさん、
おのしゅうさんの同僚の体育教師のYさん。
ぼくを除く全てのメンバーが理科や体育や国語の
教員という特殊な環境で、学生のときから、
先生に対してあまり打ち解けてこられなかったぼくは、
はたしてうまく振る舞えるだろうかと心配していたのだけど、
実際に話をすると教員であることはほとんど気にならなかった。
あのおのしゅうさんだって教員なのだということを忘れていた。


会場の雰囲気が大変によく、日曜の夜という時間帯と、
静かな住宅街の奥にあるという場所的な要因もあって、
リラックスして存分に楽しんだのだった。
やはり素敵だったのは、O夫妻のやりとりというか、
二人から発せられる張りのあるオーラのようなもので、
ああ、結婚とはいいものだなあと思ったのだった。
相変わらずおもしろい話を連発するおのしゅうさんと、
若くて元気な体育教師Yさんの受け答えとかが、
会の中で見事にくるくると回転して、ビールのおいしさと、
みなさんの人柄に酔って、ひたすらに感動したのだった。
この会のあとに、ぼくはこんなつぶやきをしていた。

霊や野ざらしの骨にでもなった気持ちで、
人が幸せそうにしているのを静かに眺めているのが、
なによりうれしい。

ここ数ヶ月こういう気持ちが持続している。
ありがとう。
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3月6日(木)

自分が載ったリクルートの『R25』が発行された。
「あの7人がたどりついたビジネスバッグの"最適解"」
という特集で、エクストリーム出社をするビジネスマンとして、
バッグの中味を公開したのだった。おどろいたのは、
チームラボの猪子寿之さんや、投資家の瀧本哲史さんと、
同じページに大きく載っていたことで、恐縮した。
誰なんだよ、この椎名ってのはってなっていそう。
http://instagram.com/p/lVPQiCCwiN/
あちこちの駅やコンビニなどで配布されている
フリーペーパーに自分が載っているというのは、
変にむずむずするものを感じるのと同時に、
少し愉快な気持ちもある。どちらにしても、
引き受けてよかったことだと思う。ありがたい。


夜に浜松町。旅行雑誌でエクストリーム出社の、
特集のページを作ってくれることになって、
担当者の方と打合せをしたのだった。あまやんさんと、
SBクリエイティブのUさんで話が弾み、よい感じだった。
そのあとに、来ていただいた東雲さんと打合せ。
三月からYahoo!の中にあるスポーツナビDoというサイトで、
エクストリーム出社協会の連載が始まっていて、
四月からどのようなテーマで記事を書いていくかを、
相談したのだった。サイトの特性と連載という形式から、
季節や時事を扱ったスポーツ系の記事を書くとしても、
いろいろ考えないといけないことが多いのだけど、
自然に楽しみながらやりたい。

3月7日(金)

会社帰りに、上司に誘われて飲みに行った。
オフィス正面の二十秒ほどで着くイタリア料理店。
会社の部長と飲みに行くことはほとんどなく、
何を話してよいかわからずに緊張していたのだけど、
ワインを適当に頼んでと言われて、
うまそうだと思ったワインをボトルで次々頼んだ。


四人(ひとりは途中で帰宅した)で、白ワイン、赤ワイン、
スパークリングワインを一本ずつ飲んだころには、
緊張は解けて、いろいろしゃべっていたが、
何をしゃべったかはあまり覚えていない。
ただ、会計の紙を見たときに結構な金額になっていて、
青くなったことは覚えている。いいワインを頼みすぎた。
しかし、部長と上司と来ていたため、ぼくは四千円で済んだ。
このような会社の飲み会なら頻繁に出たいと思った。

3月8日(土)

軽い二日酔いで昼前に起きて、半身浴をして読書をした。
ゴーゴリの『外套・鼻』を読んだ。

外套・鼻 (岩波文庫)

外套・鼻 (岩波文庫)

この前、『すばる』に掲載されていたいとうせいこうさんの
『鼻に挟み撃ち』という短篇を読んでおもしろかったのだけど、
この小説は、ゴーゴリの『鼻』と後藤明生氏の『挟み撃ち』を、
モチーフにしていて、さらに『挟み撃ち』はゴーゴリの『外套』を、
モチーフにしているとのことだから、これらを読まないと、
『鼻に挟み撃ち』のどこがとくにすごいのかよくわからないので、
とりあえず、関係があるとわかっているものを読んでいる。
すばる 2013年 12月号 [雑誌]

すばる 2013年 12月号 [雑誌]

挾み撃ち (講談社文芸文庫)

挾み撃ち (講談社文芸文庫)

ただ、読んでばかりだと書く時間がないので気をつける。
またインプット過多で考えすぎになってしまう。
ぼくみたいな賢くない脳は、考えれば考えるほど、
よくない方向へ行ってしまって、よくない気がしている。


十二時に家を出て、高円寺へ向かった。
智さんと落語を聴いたのだった。
立川吉笑さん、笑二さん、笑笑さんの勉強会的な落語会。
庚申文化会館のワンフロアにパイプ椅子が四、五十ほどあって、
それらが全部埋まっていた。予約をしておいてよかった。
笑二さんが二席やって、合計四席。どれもすごくおもしろかった。
とくに吉笑さんの新作落語がシュールで文学的な感じがした。
勉強会なので、新しい落語を考えて実験的に発表しているそうで、
初めてやるものだから当たり外れが大きいと言って、
笑いが起こっていた。そのときのは「社交辞令」というネタで、
「今度、飯でも行こう」という社交辞令を、
真に受けて騙されたと腹を立てた男が、
社交辞令で仕返しをするというもので、言葉や認識をめぐって、
どんどん突き詰めておもしろくなっていくものだった。
また聴きに行きたいと思った。


落語が終わって駅前のガード下にある古本屋を覗いて、
何冊か本を買った。

ウォーホル日記〈上〉 (文春文庫)

ウォーホル日記〈上〉 (文春文庫)

アンディ・ウォーホルの日記を家に帰ってamazonで調べたら、
古本でもっとも安くて千円以上している。ぼくは五百円で買った。
こういうとき静かな満足感が胸にじわじわ広がる。


古本屋のあと、商店街を抜けて新井屋という焼肉屋へ行った。
が、開店前だったので、二階の読書カフェのようなところに入って、
コーヒーや柚子茶を飲みながら読書をして時間を待った。
部屋は薄暗く、古めかしい木製の勉強机が並んでいて、
観葉植物が茂って水のちょろちょろという音しかせずに、
ものすごい静けさで、咳をする人もいなかった。
ぼくは静かすぎる空間になると逆に緊張して、
足音ひとつにも神経をつかって、スローロリスのような動きで、
コーヒーを飲んで、さっき買った本をめくったりした。


五時になったので焼肉屋に入った。お酒は控えめにして、
売れてる部位ランキング二月版というのが壁に張ってあったので、
それを一位から順に注文した。それが間違いないと思う。
実際に間違いなく、どれもこれも激しくうまかった。
http://instagram.com/p/lR-iL3Cwpx/
しかもお腹いっぱい食べても金曜の晩のように高くなく、
とても満足したのだった。智さんがとてもおもしろかった。
店を出て、まだかるく飲みたい感じだったので、
アイリッシュパブに入ってカクテルなどを飲んで、
終電で帰ってきた。ずっと笑いっぱなしの楽しい日で、
多幸感に包まれて寝たのだった。ありがとうございます。
高円寺すごくいいですね。

3月9日(日)

昼前に起きて、半身浴をして読書をした。
ぼんやりしている間にamazonから本がぽつぽつ届く。

自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術 (朝日新書)

自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術 (朝日新書)

この本は疲れについてとてもよく書かれていると思った。
高校のときや、二十代のときに定期的に神経をわるくして、
心療内科に通ったことがあるのだけど、その通りだと思う。
よく休息すること。体からのシグナルをきちんと認識すること。
別人のようになる前に食い止めることなどなど。
そうそうと深く頷くようなことがいっぱいだった。
とくになるほどと思ったのは次の箇所だった。

「対人不安」、「怒り」、「自信のなさ」、「自責」は相互に関連し、
雪だるま方式でムダな感情が増幅してしまいやすい。
現代人がうつ状態になるとき、ほとんどの場合、
この四つの感情が、苦しみの主体になっている。
この四つの苦しみの背景にあるのは、
経験の乏しさによる「価値観の未熟さ」だ。
例えば、他人や世の中を変えられると思っている。
例えば、自分は周囲から大切に扱われるべきものと思っている。
例えば、努力すれば必ず報われると思っている。
例えば、正義は必ず勝つと思っている。

いろいろ諦めてから、ずいぶん楽になった。
諦めるというとネガティブに聞こえるかもしれないので、
受け入れるといった方がいいだろうか。
できないことはできないし、やりたいことしかできない。
そうなったら働けないじゃないかとなったら、
仕方ないから働かずにいることになると思っている。
収入がないなら、親戚の家で何かしたり、
それもだめになったら、路頭に迷って、
のたれじにするのも自然で仕方ないかと思っている。
生まれて生きて死ぬだけ、生き方にいいもわるいもない。
いまのところ毎日楽しく、うまいご飯を食べてお酒を飲んで、
素敵な人たちと会って、暮らすことができている。
といっても、恵まれている今だから、
いろいろ言えることなのだと思う。


二時半に、地元の友人オカンダと遊んだ。
小学生の頃からの友人ということもあり、
小学生の頃に「大人がやることだ」と思っていたことを、
いい大人(三五歳)になった今、順にやっていくことにした。
まずは港南区の住民なら誰もが目にしていながらも、
中に入ることはほとんどない港南ゴルフセンターへ行って、
ゴルフの打ちっぱなしをした。まさに大人のすることだ。
http://instagram.com/p/lT6YFviwiP/
http://instagram.com/p/lT6eYniwiW/
それから横浜市営地下鉄で桜木町まで行って、
マリンタワーへ上った。マリンタワーというシンボルも、
横浜市民からすると近くて遠い存在だったりすると思う。
近くて遠い存在は、妄想を膨らませる原因になる。
ぼくとオカンダが言う「近くて遠い存在」というのは、
つまり、子どもの頃に目にしていながら、
子どもには立ち入ることのできない場所(タブー)と言える。
http://instagram.com/p/lVASLVCwmd/
表面的なインプットの種は蒔かれるが、
その実体を確認することはできない。
すると壁の向こう側で、妄想が芽が育ち始める。
大木のようになった妄想は、現実と比較するまで、
下手をすると自分の傷や負い目になることだってありえる。
大人になった今、妄想と現実の答え合わせをすることで、
認知の修正を行い、現実世界での平衡感覚を獲得するのだ。
http://instagram.com/p/lU_ZWOCwks/
子どもの自分の傍らに、大人の自分が立ってやり、
一緒に妄想のお焚き上げを見守って、精神の統合を図る。
要するにF.S.パールズのゲシュタルト療法のようなものだ。


この日最後の闘いの舞台は「かに道楽」伊勢佐木町店だった。
http://instagram.com/p/lUW-88CwsO/
大ボスであるカニのオブジェを見上げ、
「ついに来たな」とお互いに士気を高めていると、
入口の自動ドアが開いて、白髪の男性が、
若い女性の肩に手をかけて出てきたのだった。
「同伴!かに道楽のイメージ通り!」
と絶叫しそうになるオカンダ。
妄想は現実とは違うんだと、妄想を成仏させるどころか、
まったく妄想通りの先制攻撃を受けてしばらく立ちすくんだ。
しかし、中に入ってからは終始我々のペースで、
妄想の回収が捗った。かに道楽は、イメージ通りでもあり、
そうでもないところもあった。
http://instagram.com/p/lWnUvpiwgh/
エクストラコールドを二杯。日本酒を一合。
カニはコース料理で、天ぷら、茹でたもの、刺身。
カニ味噌、カニ豆腐、カニの炊き込みご飯と、
かに道楽を完璧に堪能したのだった。うまい。
ひとり一万円したが、精神分析を受けたものだと思えば安い。
危惧せず立ち向かい経験をすること。それが大切なのだ。