ICC・いのくまさん・スーパーノヴァ

@nao_inaくんと午後三時に初台で待ち合わせて、
ICCへ行きました。五月一五日からオープンスペースが
リニューアルされたので見に行ったのでした。


光を使ったインスタレーションが多く、
中でも感動的だったのはクワクボリョウタ氏の
「10番目の感傷(点・線・面)」でした。
真っ暗な部屋の中を鉄道模型が健気に
ジリジリジリとゆっくり移動するのですが、
その模型の先端に強力な豆電球があるのです。


その豆電球列車は、鉛筆の森やザルのトンネルや、
洗濯バサミの鉄塔群といった日用品の間を縫って進む。
するとどうなるか、真っ暗な部屋の壁に
電車の運転手さんが見たような、
立体的な風景の黒い影が描き出されるのです。
やさしい光と影は刻々と姿を変えて、
その様は、はああとため息が出るほど美しく、
クワクボ氏の発想の素晴らしさにしびれました。


まず影があんな風に動くというのが衝撃的で、
それから人間の目の見え方の構造や、
日用品の中を走っていても影はまるで街に見えるとか、
そういうことを考えすぎて言葉が出なくなりました。



その後、

ICCに来たらこれを飲まないと
という「ICCフロート」を飲みました。うまい。


ひと休みして、東京オペラシティ内で開催中の
猪熊弦一郎展いのくまさん」へ行きました。



これはYUさんから教えてもらったのでした。
で、僕らは猪熊さんのことをまったく知らなかったのですが、
僕は猪熊さんの作品に完全に魅了されました。


猫や鳥や顔の絵がたくさんありました。
そのどれも、一枚の絵にとてもたくさん描いてあるのです。
一枚の紙に鳥が三〇羽ぐらい描いてあって、
猫も鳥も顔も、とても抽象的でシンプルなのでした。
他には、街の絵もありました。といっても、
写実的なものではなく、長方形や記号を
組み合わせて描かれた街で、よくよく本質的なものだけが、
抽出されていました。晩年は宇宙の絵も描いていて、
なるほどこのように繋がっていくのかと感動しました。


たくさんたくさん描く。するとだんだんシンプルになる。
磨かれて削がれてシンプルになった部品を組み合わせた構造。
ぱっと見ると簡単な線なので、誰にでも描けそうに見えるけど、
実際は猪熊さんにしか描けない線。この人が描けば、
何を描いても必ず猪熊さんの絵になる
本質的なものだけで構成される絵の追究。
その無限の繰り返しは涙が出そうになるくらい
尊くて愛しいと感じました。



刺激が多すぎて、

ぐったりしてしまいました。
特に僕は最近どうもぼんやりしていたのですが、
ふと感じたのは、空になっているということでした。
どうも僕の中が空になっているような気がしたのです。
そこに温かくて清いものが沁み込んできたのでした。


次に、@nao_inaくんの奥さんがお手伝いをしているという
演劇を観るために、下北沢に移動しました。
開演前に下北沢の焼き鳥屋に入って
ビールを飲んで食事をしたのでした。


ここの鳥やしいたけ、オクラや海老、
どれもたいへんうまかったです。うまいうまいと
食べながら、鑑賞したものについての感想や、
そこから展開して、抽象的なものについてや、
パラレルワールドについてや、宇宙のことについて
話し合ったりしたのでした。



ほろ酔いになって、劇団あなピグモ捕獲団
「SUPERNOVA」を観ました。
場所はスズナリのすぐ近くのシアター711。


これがまたタイトルからお分かり頂ける通り、
宇宙的な物語で、パラレルワールド的な内容で、
直前に@nao_inaと話していたことや、
今日見たり話したりしたことに深く関わることで、
驚いてしまいました。今日は何かそういう軸を
中心にして動いていたのだなあとぼんやり思いました。


台詞や演出は、アニメ的な感じで、
最初違和感を感じましたが、しばらく見ていると、
展開と合わせて押井守的なものを感じました。
内容はとても説明が難しいのですが、
とにかくよくこんなに構造的で複雑で、
宇宙的な物語を作ることができたものだと思いました。


それから抽象的な台詞や設定の中にたくさん、
鑑賞者が具体的なものに割り当てることができるような
要素があって、あまりにも考えることが多くて、
あたまがフワッフワになりました。


劇場を出てもうまく言葉が出てこなくなり、
そのまま渋谷まで行って別れて帰りました。



それにしても、

今日はインプットの多い日でした。
@nao_inaくん、ありがとうございました。
「今日はいつもよりぼんやりしていてすみませんでした」
と言ったら、
「いつもと違いがわかりませんよ」
と言われたので、そんなに違わないのかと思いましたが、
なんだか不思議で印象的な日でした。
そう、僕はどうも透明になっている気がします。