首都高速都心環状線(Circle1)を歩いて回るイベントに参加した。

一二月一日土曜日、高架橋脚ファンクラブの人々に混ざって、
首都高速都心環状線(略称:Circle1)を回ってきました。
と、これだけだと何のことかわからないと思いますので、
順に説明したいと思います。


おでかけルート共有サービス「ルートパッド」に、
これまでとは毛色の違うルートが投稿されたのでした。
「首都高Circle1一周」というルートでした。

投稿者は、東京エスカレーターというサイトをやっている
エスカレーターソムリエの田村美葉さん。
サイトやデイリーポータルZの記事は拝見していて、
田村さんが高架橋脚ファンクラブの会長であることも、
なんとなく知っていました。


で、調べたら、このルートパッド上のルートは、
高架橋脚ファンクラブのメンバーの方々に、
ルートと通過点を伝えるために使っていただけていて、
実際にこのルートで、高架橋脚を楽しみながら、
歩くイベントがあるということがわかりました。
十一月三〇日、つまり前日の夜に。
これは、ルートパッドの機能改善の参考になるかもというのと、
街歩きが好きなこともあって、おもしろそうだと思い、
参加することに決めて寝ました。

翌朝

寝坊しました。
家を出ていないといけない時間を二十分過ぎてましたが、
家人がクルマで買い物に行くというので、二分で支度をして、
ついでに駅まで乗せてもらって、うまく電車を乗り継いだら、
出発の二分前に、奇跡的に集合場所の浜松町に着きました。


南口改札を出たところに、十人くらいの団体がいたので、
スタスタと駆け寄って、


「首都高を歩くイベントの人ですか?」


と聞いたら、ギョッとされて、


「え、違います!」


ぜんぜん違う団体でした。
見回したら、もうひとつ団体があったので近寄ると、
ルートパッドの画面を印刷して持ってる人がいたので、
ここだと思い、混ざることができました。
ちなみに、田村さんは少し遅刻していらっしゃいました。

いきなりスタート

開会の挨拶や、自己紹介的なものがあるかも
と思っていたのですが、いきなりスタート。
すたすたと皆さん歩き出しました。
「取り残されないように、がんばってくださいね。
会長(田村さん)は早いですから」
と、すでに参加経験のある女性がアドバイスしてくれました。


スタスタと歩き、高架橋脚が見えたら皆で写真を撮ります。
巨大な建造物って、理由はわからないのですがグッときます。
祖父が建設会社に、父が鉄鋼会社に勤めていたからか、
工業的なDNAが反応しているのかもしれません。
ぼくも大学ではプロジェクトマネジメントを学ぶために、
プラントエンジニアリングをほんの少しだけやりました。
(全部忘れましたけど)




それにしても、

寒かった。
途中小雨が降ったりして、余計に寒かったです。
もっとも厳しかったのは、三宅坂JCTから竹橋JCTへの道。
手はかじかみ、喉が冷えろれつが回らなくなり
高架橋脚(こうかきょうきゃく)と言おうとしても、
「かーかこーかく」になってしまうほどでした。


ちなみに、チェックポイントはジャンクション。
この順番で歩きます。

浜崎橋JCT
一ノ橋JCT
谷町JCT
三宅坂JCT
竹橋JCT
神田橋JCT
江戸橋JCT
京橋JCT
汐留JCT
浜崎橋JCT

しかし、JCT(ジャンクション)ってカッコいい。
ひとつでもカッコイイ高架道路が、重なったり、
複雑に、しかし整然と機能している。言葉の響きもいい。

ジャンクション(junction)は、道路において、
異なる方向に進もうとする複数の車両を中心とした交通を制御し、
交通事故を最小限にするために設けられた施設である。
広義の交差点ともいえるが、平面交差 (intersection) のみならず
立体交差 (Flying junction) の概念を含み、
さらには交通結節点としての位置づけをも含む広い意味を持つ。

(参考:ダラスのジャンクション)
Wikipediaより

で、なんだっけ。

そうだ、とにかく寒かったのだ。そして、
ルートパッド上では、今回のルートは、

距離:15 km
時間:3 時間

とあったから、余裕だろうと思っていたのですが、
開始から三時間経っても、


まだルートの半分にも達していない


のでした。これはどういうことかというと、
皆さんがよりいい位置から橋脚を楽しむために、
回り道をしたり、脇道に逸れてじっくり鑑賞するためです。
これこそが醍醐味なのですが、初心者のぼくには、
快楽と、疲労・寒さのせめぎ合いでした。

それから、

時間が経つにつれて分かってきたことは、
皆さんそれぞれに注目しているポイントが異なるということ。
高架橋脚は共通しているのですが、
橋脚の下の水辺が好きな人、石垣、坂道、マンホール、看板、
ビル、ビルとビルの隙間、行き止まり、トマソン的なものなどなど、
守備範囲がそれぞれあることが分かりました。
他にも今回はありませんでしたが、工場やダムなど、
実に様々で、とことん奥の深い世界だと息を呑みました。
そして、街の中には、
こんなに見るべきもので溢れていたのかと、
ぼくはちょっと感動して、やさしさに包まれて、


目にうつる全てのものはコンテンツ


という心境になってきました。

アスファルトの庭で〜

コンクリの香りの〜

ヤバ景に包まれたなら〜 きっと〜

目にうつる〜 すべてのものは〜

コンテン〜ツ〜

五時になると、

すでに暗くなって、寒さも一段と増してきました。

メンバーはいつの間にか、JCTなどから合流して、
二十数名になっていました。


途中休憩で、完全に防寒対策を誤ってきたぼくが、
寒さに震えていると、


「大丈夫か!?顔が白いぞ!」


と気にかけていただいて、
マフラーを貸していただけました。
このマフラーがなかったら、間違いなく、
ぼくはゴールできなかったでしょう。
イベントは、寒さからか皆さんの口数も減ってきて、
傘を杖代わりにして歩く人も出て、
もはや、都環寒中行軍の様相を呈していました。


汐留JCTを越えて、
「あともうちょっとだよ〜」
という言葉に励まされ、無事に浜崎橋JCTに、
もどってこれました。一八時過ぎて、ゴールです。
七時間くらい歩きました。拍手が起こりました。


すごく寒くて疲れましたが、
自分の好きな景色の写真を撮ることができて、
また、メンバーの方からおもしろいお話を聞けて満足しました。
すごい達成感も味わえましたし。
打ち上げで、熱燗を少し飲んでから、
予定があったので、途中で失礼しました。


ルートパッドについても、
こうした方がいいなということがたくさんわかって、
大収穫でした。ルートパッドは街歩きに完全特化する方向で、
改良していくと、もっとも効果を発揮できると思いました。


家への帰り道、いつも見慣れすぎて、
気にもとめなくなっていた、
横浜横須賀道路の高架橋脚をまじまじと見つめて、
反射的にポケットからカメラを取り出しそうになりました。
ああ、楽しかったな。